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第3話
ついに、王国の奴らがやって来た。父は痩せ細った体を隠すため、服の下に綿をつめている。王国の奴らは以前よりも少ない人数できており、兵士も目に見える人数しか連れていないようだった。よかった。この人数なら、村の者だけでなんとかできる。父と俺で村を案内する。偽の武器庫や食糧庫、井戸などの位置を奴らは丁寧にメモを取っていた。やはり、侵略しようとしているのだろう。その晩、俺達は一応は歓迎している雰囲気を出すため、宴を開いた。奴らの機嫌を損ねないためだ。しかし、奴等は
「蛮族の飯など食えるか。毒が入っているかもしれないのに。」
と言ってきた。そして、自分達で持ってきた干し肉や葡萄酒を飲んでいた。 やりたくもない宴会を開き、この仕打ちなど村人も俺も怒りが湧いてくる。第一、俺達は命に敬意を払っているから、食べ物に毒を入れるなんて野蛮な行為するわけが無い。俺達の誇りまでコケにするのか。しかし、意外なことにグリシャのみが俺達の宴に参加すると言ってきたのだ。奴は何を考えているかわからず、不気味だ。奴が父の隣に座ろうとするのを俺は防ぐ。父の綿を詰めた服は近くで見るとバレてしまうかもしれない。
「そこでは、料理が取りにくいでしょう。よかったら、私の隣に座ってください。」
俺がこういうと、グリシャは俺の言った通り、隣に座った。そのとき、一瞬、懐かしい香りが薫った。
「ご馳走になります。この村の料理は美味しいですね。やはり王国のものとは、鮮度が違うのでしょうか。」
グリシャは出された料理を次々と平らげる。仮面をつけながら器用に食べるものだ。あの細い体のどこにそんなにたくさんの料理が入っているのだろうか。
「この村はとてもいいところですね。料理も美味しいし、美しい方もいらっしゃる。」
グリシャは俺達の村を褒めちぎる。初めは王国の使者だという色眼鏡でグリシャを見ていた村人たちも次第に彼と打ち解け始めた。こいつは、人の心の隙間に入り込むのが上手いのだろう。俺だけはこいつを警戒し続けなくては。宴会が終わり、俺がグリシャを他の王国の使者がいるテントまで送る。打ち解けたとは、言っても隣村の敵として、こいつを狙う者がいるかもしれないからだ。グリシャは、強い酒を浴びる程、飲んでいたため足元が覚束ない。ぐらりと奴が倒れそうになったので支える。あまりに体が軽く驚いた。
「送ってくださり、ありがとうございます。いい夢を。」
グリシャは礼を言ってテントに戻って行った。テントの前には、見張りがいるためもう大丈夫だろう。
「助けて、ロキ!!」
青い瞳の白に近い金の髪を持つ子供が連れ去れていく。俺は必死に助けだそうと、走る。しかし、上から大きな大人に抑えつけられて身動きが取れない。そのまま、その子は連れ去れていく。俺はそれを見るしかできなかった。随分と、懐かしい夢をみた。子供の頃の記憶だ。俺はこの経験から、体を鍛え、狩の腕を磨くようになったのだ。今、あの子はどうしているのだろうか。あの時、今のような力があれば、助けられたのに。最近は、この夢をみなくなっていたのに、どうしてみたのだろう。俺が夢の余韻に浸っていると、
「キャーーーー」
母の悲鳴が父の部屋の方から聞こえてきた。俺は短刀を握り、急いで向かう。嫌な予感がして冷や汗がつたう。
「あなた!起きて!!あなた!うぅ、、」
母が泣きながら、父を揺さぶっている。母を押し除け、父に触れると体は氷のように冷たく、生き物の暖かさは失われていた。あの尊敬する父が死んでしまったことを悟り、俺は絶望する。これから、どうすれば。父と思い出が頭を巡る。なぜ。父は確かに、無理をしていたでも、すぐに死んでしまうなんて。部屋を見渡す。窓にも鍵はかけられていて、誰かが入った形跡もない。争った跡も見当たらない。母に聞くと寝室の鍵は閉まっていたらしい。鍵は父と母しか持っていない。父は病で死んでしまったのだろうか。疑念が生まれる。
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