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第42話
朝早く、俺達はどちらが言い出すでもなくテオの墓に向かった。
墓といってもそこに彼の遺体は埋められていなく、髪が一房あるだけだ。
故郷の土にすら返してやれず、虚しさや後悔が胸を締める。
墓には大量の花や食べ物が備えられていた。
俺は持ってきたテオが飲んでいた酒を置く。
「テオ、本当にすまない。お前は俺ができなかったことをしてくれた。グリシャを守ってくれてありがとう。」
と心なかで呟きながら墓に祈る。
そんな俺の横でグリシャも無口に手を合わせていた。
首には昨日の痣が赤黒く残っている。
俺達は何も喋らずただ墓の前でいのる。
すると温かい風が俺達の間を通り過ぎた。
泣くし資格なんてないのにテオが許してくれたように感じて俺は涙がながれる。
必死に止めようと奥歯を噛み締めると、手に人肌を感じた。
俺よりも細い指が力強く俺の手を握る。
昨日から冷えていた指先が徐々に温められ、俺はグリシャを見つめる。
2人の視線がぶつかって決心がついた。
この罪を背負いながら生きていこう。
それがせめてもテオへの恩返しになるかもしれない。
「グリシャ、俺と生きてくれ。」
俺がそう言うとグリシャは戦士のような顔をした。
そして俺を抱きとめる。
薄い胸板に顔が埋められ、顔が見えないがグリシャの鼓動を大きく感じる。
「ああ、2人で罪を背負おう。」
いっそう強く抱き合った。
持ってきた酒の匂いが風にさらわれ、お互いの体温だけが強く残る。
1人で背負うには大きくて、かと言って逃げだせはしない罪。
分かち合うことは救いではなく傷の共有だ。
それでもこの苦しい道を2人で生きていこう。
振り返らずにテオの墓を後にした。
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