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5話 視線

 尚稀が俺の家に泊まりに来た翌朝。いつもの様にテープタイプのおむつから、パンツタイプのおむつに替えようとした時、ふと思い付いた。 「なぁ、尚稀。こっちおいで」 「ん~?」  今にもおむつを替えてもらえると思っていた尚稀は、不思議そうにもぞもぞとベッドを降り、俺の所までやって来た。俺の後ろ手には、好奇心で買ったあるものが隠してある。 「尚稀さ、昼間ならおしっこの量そんなに多くないから、いけると思うんだよね」  最近は特にあまり我慢しないでおむつに出しているから、一回の尿量はさほど多くはない。 「赤ちゃん用おむつの一番大きいサイズ。尚稀なら穿けると思って」  隠していた子ども用の可愛い絵柄が入ったおむつを尚稀に見せる。 「いつものと、これ、どっちがいい?」  尚稀はもじもじとしながらも、子供用おむつを選んだ。一応男の子用にしたので、水色を基調としたデザインで抵抗は少ないと思う。  ちょっとピンク色の女の子用のおむつをした尚稀も見てみたいと思ったのは秘密だ。 「こっちな、よし交換しよう」  思った通りサイズも問題無く、子ども用の幼い柄が入ったおむつをしているとやはり可愛らしい。 「やっぱり似合う。尚稀、可愛いよ」  頭を撫でて、おしゃぶりもする? と聞くと頷いた。おしゃぶりをする様になってから、学校とかで無意識に指しゃぶりするのは減ったと思う。そう言う意味では、おしゃぶりにして良かったかもしれない。  さすがに学校におしゃぶりを持って行った事は無いが。 「つかさ~」 「ん? おむつ替える?」 「ん、」 「やっぱり吸収量も問題無いな。明日から学校でもこっち使う?」 「⋯⋯」  しばらく間があったが、最終的に頷いたので、尚稀の中で甘えたい気持ちとの葛藤があったのだろう。  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆  修学旅行からしばらくして、同じ班だったクラスメートに声を掛けられた。 「斎藤! デジカメで撮ってた方の写真現像したからやるよ! あと、境にも同じもの渡しておいてくんねぇ?」  こいつはカメラが好きらしく、良く撮れた写真は現像しないと気が済まないらしい。完全な趣味らしいので、自分の分は受け取っておく。 「境の分さ、あいつに直接渡してやってくれない?」 「マジで言ってる? 旅行中も殆ど喋らなかったし、喋ったとしてもお前にだけだろ。接点も大して無いしキツイって」  まぁ、尚稀のクラスでの評判はこんなもんだ。 「あいつ、思ってるより怖くないから。頼んだ」  肩をポンと叩くと、表情が引き攣った。  尚稀が俺だけを頼りにしてくれるのは嬉しいが、多少でも楽しい高校生活と言うのも味あわせてやりたい。尚稀が本気で嫌がる様ならフォローできる様に、いつもより気を付けて様子を見ていた。  放課後、尚稀が机から鞄を取ろうとした時、ようやく声を掛ける決意をしたらしい。 「あのさっ! 修学旅行で一緒の班だった佐藤だけど! 趣味で写真撮っててさ、現像したから良かったらもらってよ!」  何故クラスメートに自己紹介から入る。緊張しすぎだろう。尚稀も名前くらい覚えてるよ。あと、写真好きなのも知ってる。 「ん、サンキュ」  おぉ、尚稀ちゃんと返事できたじゃん。 「いや~、境くんこの間もあんま喋らなかったから、取っ付き難いヤツかと思ってたけど、案外普通だな!」  いきなり好印象になったじゃねぇか。佐藤、気が変わりやすいな。 「まぁ、別に普通だと思うけど」  よしよし、話続けられてるじゃん。お前、今赤ちゃん用おむつ履いてるし、ちょっと前におむつ替えのメッセージが来てたから、しっかりお漏らししてるし、全然普通じゃないけどな。外面さえ取り繕えればいいんだよ。  今日は金曜日でこのまま俺の家に行くから、ちゃんと喋れたご褒美も兼ねて赤ちゃん返りコースかな。  ごちゃごちゃ考えていたら、佐藤と別れた尚稀が俺の席に来ていた。 「佐藤と喋れてたじゃん」 「⋯⋯つかさが見ててくれたから頑張った」  俺が見てたの気付いてたのか。素直に頑張ってた所、俺はお前を見ながら煩悩全開だったのは許して欲しい。   

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