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1話 始まり
屋上に響く殴打の音。
俺はここで毎日、金山慶太に殴られている。正確には、金山と海野と空本の三人。海野は見張り役だし、空本は気まぐれで毎回殴る訳じゃない。
金山だけが執拗に、何度も何度も殴る。
何かきっかけがあったのが、それすら俺には分からない。毎日、本来鍵のかかっているはずの屋上に呼び出され、顔はバレるからと腹や身体を殴り、蹴られる。
行き過ぎた暴行は死に直結するけどな、と思わないでもないが、俺は逃げもせずそれを受け入れている。
それは何故か。金山の興奮した表情が見たいから。俺を殴る時の高揚した顔と、欲望の隠しきれない目。
それが俺をおかしくさせる。
俺は、いつ仕掛けるかチャンスを伺っていた。
そのチャンスは思ったよりも早く訪れた。金山が他校との喧嘩で怪我を負って入院しているらしい。
クラスで目立たないながら、真面目な生徒である俺は、担任から上手く情報を聞き出し、入院先の病院を突き止めた。
思ったよりも近所だったため、学校が終わるとそのまま病院へ向かう。あらかじめ聞いていた階へ進み、ナースステーションで見舞い者カードに記入して、病室のネームプレートに金山の名前がある事を確認して入る。
「よぉ、金山」
「!? 水沢?」
四人部屋の窓際のカーテンが開いていて、金山がベッドに座っていた。座っていると言っても、両足に包帯なのかギプスなのかを巻いているので、足は真っ直ぐに伸ばされている。
「何で、いるんだよ」
「お見舞い。いけないか?」
「ちっ」
ベッドの傍らに置かれていた丸椅子を引き寄せて、勝手に座る。
金山はそっぽを向いて、喋ろうともしない。俺たちがまともに話した事はこれまでもなかった。屋上での暴行は無言で行われるし、教室では目立たない俺と不良の金山の接点はなく、無視されていたので当然といえば当然だ。
無言で金山を観察していると、何となく落ち着きがないなと思う。最初は俺が側にいるのがそれほど耐えがたいのかと思ったが、それならばもっと強く追い払うはず。歓迎されていないのは当たり前に分かるが、かと言って帰れとも言われていない。
「⋯⋯っ、」
「どうかしたか?」
金山が辛そうな声を出したので、どこか具合が悪いのかと思う。外傷が痛むのだろうか。
「⋯⋯便所、連れてけ」
「便所? 我慢してたのか?」
落ち着きがなかったのはそのせいか。だったら、もっと早く言えばいいのに。そう思いつつ身体を支えると、金山は二本の松葉杖をついてゆっくりと病室を出ようとしているが、あまりにも遅いので、心配になって言われるまま付き添う事にした。
「車椅子とかの方がいいんじゃないか?」
「うるさい」
人が心配してるのに、うるさいとは失礼だな。金山は自分から連れて行けと言ったくせに、俺を無視して進もうとする。けれど怪我した足では上手く進めず、何度も躓きそうになるのを支える。
「いやまじで。これ、日が暮れるぞ?」
「⋯⋯っ、」
金山のやりたいようにさせてたら、本当に日が暮れる。そう思った時、歩みが止まった。
「どうした? 痛むか?」
「っ、」
目をきつく瞑り、何かに耐えている様子に、そろそろ限界なのかと思う。
「今、車椅子借りてくるから」
「ま、て、」
そう言って俺を見上げた金山は、あの屋上での興奮した表情をしていた。
「⋯⋯」
「⋯⋯」
しばし無言で見詰め合うと、そのまま金山がしゃがみ込んだ。松葉杖も手放した金山は、股間をきつく握り締めている。もう、間に合わないだろう。でもあの顔をしたと言う事は、俺に好機があるという事。
ただ黙って様子を見ていた。
少しして金山の身体の力が抜けるのが分かって、床を見たが濡れてはいない。握り込んでいるそこに手を這わせ、病衣の隙間から股間を触ると、ぐじゅりと濡れた紙の感触がした。
「何だ、おむつしてたのか」
「⋯⋯」
「って事は、病室に替えもあるよな?」
何故おむつを着用する事になったのかは分からないが、替えも置いてあるはずだろう。そう思って確認すると、小さく頷いたので場所を確認してから、その身体を抱き上げる。
「うわっ、ちょっと!」
「黙ってろ、人気がないとはいえさすがに気付かれるぞ」
始めからこうして抱き上げてもよかった。それをしなかったのは、俺に考えがあったから。
そのままトイレの個室に押し込むと、鍵をかけて待ってるように伝えて、病室を探る。金山の告白通りに、備え付けの小さな荷物入れにおむつのパッケージが入っていた。そこから一枚取り出すと、トイレへ戻る。
「金山ー、俺。開けて」
「⋯⋯」
金山は素直に個室の鍵を開けたので、中に入る。
「おむつ替えましょうねー」
「⋯⋯」
浴衣状の病衣の前を広げると、ぷっくりと薄黄色に膨らんだおむつが現れる。この中に、我慢できずおしっこをもらしたのだと思うと興奮する。
サイドを破っておむつを引き抜くと、そのまま金山の顔面に吸収体を近付ける。
「んっ! 何すんだ!」
「舐めろ。自分で汚したんだろ?」
「っ!」
意識的に声のトーンを落として、それを強要する。
金山は黙って俺を見上げた後、チロリと舌を出して、おむつを舐めた。一瞬顔をしかめたが、俺の許しを待つように、何度も舌を這わせている。
金山の両手が、自分の股間を隠している事にも気が付いている。
「おいしかったか? 自分の小便」
「⋯⋯」
やっとおむつを顔面から離すと、くるくると丸める。
その隠した両手の中で、陰茎がしっかり育っているのを見逃さなかった。
「黙ってちゃ、分からないぞ?」
「んっ! ああっ!」
両手ごと、股間を革靴で踏みつける。溢れ出したのは、嬌声。男に使うのはおかしいが、女を思わせるほど、艶めかしい声だ。
俺を見る目は、欲望がギラギラとしていて、やはり俺の考えは間違っていなかったと確信する。
「ずっと俺にこうしてもらいたかったんだよな?」
「あっ、ん、ああっ!」
二、三度踏んだだけで、そこから白濁が吹き出した。
「これからが楽しみだな? 金山」
「⋯⋯」
金山は、歪に笑った。
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