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第44話 きらめいた
俺が告白をしてから一ヶ月が経った。
その間、何度も諦めようとした。それでも、出来なかった。
先生が視界に入るたびに胸がぎゅっと痛くなる。目をそらさないと、自分の中にあるどうしようもない黒い欲がでてきてしまいそうになる。
嫌いになろうとした。頭の中で先生の厳しい言葉を何度もなぞる。前まではそれをするだけで苛立ったのに、今では愛おしさで胸がいっぱいになる。
気づけば、俺の中は先生でいっぱいだった。もう簡単に離れられるようなものではない。
だから、もう逃げることをやめた。自分の気持ちを丸ごと受け入れることにした。
その日から、授業で寝ることをやめた。
黒板を見てノートを取る。どの科目も先生の話を一言一句聞き逃さないように集中した。分からないことはそのままにしない。
最初は先生のためだけだった。
いつか自分と先生が一緒になれた時、自分が先生を守れるようになりたかった。誰かに何を言われたとしても、先生に告白した時のような辛い顔をさせたくなかった。
テストの点数が上がる。そのたびに少しずつ前に進めているような気がした。
今まで考えられなかった先が、少しづつ形になっていく。
先生のためがいつしか自分のためになっていった。
それでも、その先に先生がいない未来はどうしても想像出来なかった。
教室の扉をガラガラと開ける。教室の中には誰もいなかった。
一番後ろの窓に近い席に腰を下ろす。
黒板の上にかかる時計を見ると、短針は七を指していた。
机の横にかけたリュックから古文の参考書を取り出し、机の上で開く。
その時、一枚の折りたたまれた紙が間から滑り落ちた。
拾い上げ、そっと開く。それは先生が『よくやった』と書いてくれた小テストだった。
先生の痕跡を確かめるように指先でなぞる。
「よくやった」
小さく口に出してみる。それだけで頑張れるような気がした。
ガラッと教室の扉が開かれる音がする。
反射的に顔を上げると、教室に入ってきた先生と目が合った。
一瞬、先生の目が大きく見開かれる。けれど、その目はすぐに逸らされた。
先生は何もなかったかのように教卓へ向かっていく。
俺はその背中を無意識に目で追っていた。
いつもと何も変わらない朝。そこに先生が加わる
だけで何倍もきらめいているように感じられた。
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