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第5話
煙草の火が暗闇に浮かび上がる。
ヒロの煙草を吸う横顔を俺は盗み見る。
通った鼻筋や長いまつ毛が照らし出される。
「俺もちょうだい。」
ヒロは無言で煙草とライターを俺にわたす。
煙草に火をつけて、肺に煙を吸い込む。
やった後に煙草を吸うのが俺達の定番になっている。
「やった後の煙草ってうまいよな。」
「それな。」
随分と色気のないピロートークだ。
余韻もくそもあったもんじゃない。
「今の彼女がさ、煙草いやがるから吸えないだよね。部屋とか服が煙草臭いとめっちゃ機嫌悪くなんの。」
今朝、見た清楚系女子は嫌がるに決まっているだろう。
今日、俺の家に来たのも煙草を吸うためか。
俺なら一緒に吸ってやるのに。
乾いた笑いが口からもれる。
「禁煙、がんばれよ。」
思ってもない応援の言葉をヒロにかける。
「おー、ありがとう。」
ヒロは適当な返事をして、寝転ぶ。
数秒後、寝息が聞こえてきた。
沈んでいた意識が朝日よって引き戻される。
俺の隣には、ぽっかりと空間が空いていた。
そこに触れると、冷たくて随分、時間が経っていたことがわかる。
「今日はありがとう。」
スマホをみると簡素なメッセージが一件だけ表示されていた。
微かに残る煙草の匂いだけが、俺とヒロが一緒にいたことを示している。
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