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第32話

カンカンと無機質な金属音を出しながら階段を登った。 久しぶりのアパートの様子は前とは全く変わっていないことに安心する。 そして自分の部屋の見える位置まで来たときに俺は異変に気づいた。 部屋の前に人影が蹲っている。 『あ、ヒロだ。』 俺は直感的にそう思った。 でもそんなはずはない。 だって俺はあいつを殴ってまで別れを告げたんだから。 そんなことを思うのに心臓はバクバクと部屋に近づくたびに心拍数を上げた。 部屋まであと数メートルとなったときに俺の直感は当たってしまう。 ずっと遠くからヒロとその恋人を盗み見してきた俺はあれがヒロだとわかってしまった。 逃げてしまおうとも思ったけど 『自由になって、本当に会いたい人に会いに行って』 というシマさんの言葉が頭に響いた。 あんなに優しい人を傷つけて捨てて戻ってきたんだ。 もう引き返すことなんてできない。 俺は重い足を進めて部屋の前へと進んだ。 部屋まであと10歩程度のところにきてヒロが顔を上げて目が合った。 鼻先が赤く寒そうだ。 この寒空の下、どれくらいそこにいたんだろうか。 さらに観察してみると普段はセットされていてきちんと立ち上げられた前髪はぺたりとして顔が小さくなっている。 最後に見たときよりも明らかにやつれているのが見てとれた。 ヒロは追い詰められた表情で何かを言おうと口を開いたけど口をつぐみ、顔を逸らした。 そんなヒロが放っておけなくて俺は鍵を開けながら 「寒いだろ。中入れば。」 と言ってヒロを招き入れた。 扉を開けるとあの日から誰も使ってなかった部屋は少し埃くさくてそれだけヒロと俺が離れていたことを示す。 ヒロは前までズカズカとまるで自分の家のように入ってきたのに今はおずおずと玄関を通った。 さらに靴まできちんと揃えるものだから俺はなんだか寂しくなってしまう。 まあ自分を殴った相手に横柄な態度で接する筈がないか。 それでも俺の知っているヒロとは全く違う姿に戸惑いが隠せない。 そもそもなんでヒロが俺の家の前にいたのかすらわからなかった。 とりあえずヒロの冷え切った体を温めるために暖房を入れる。 ついでにお茶でも淹れようかと台所へと向かう。 俺がお茶を入れたり荷物を片付けている間、ヒロはただ立っているだけだった。 ただ視線は俺へと注がれ続けていた。 「いつまで立ってんの?座れば?」 そう言いながら俺が腰掛けるとヒロも俺の前に座る。 向き合ってみると弱々しいその姿は以前の自信満々で好きなように生きてますみたいな表情とは違っていて今にも消えてしまいそうで俺の不安を掻き立てた。 こんなにボロボロなるヒロは彼女に振られたときでさえ見たことがない。 どうすればいいかわからないがひとまずお茶でも飲めば顔色は幾分かましになるだろうと温かいお茶をだす。 けどヒロはそれに口をつけない。 どうしたものかと俺はその姿を眺めていると 「ミツル、今までごめん。」 ヒロは俺と会ってからずっと閉ざされていた重い口を開きそう言った。 さらに驚いたことにヒロは深々と頭を下げていた。 予想外の光景に俺は驚き以外の感情が出てこない。 何も言えないでいる俺とは反対にヒロはタガが外れたように話しだす。 「俺はミツルが大切だったから付き合ったら関係性が変わるのが怖くて、、。それで、今までお前の気持ちを無視し続けて楽だからセフレでいた。けどお前が他の男といるの見て我慢できなくてあんなことした。」 知らなかった。 ヒロが俺を大切に思っていたなんて、ヒロにとって俺は掃いて捨てるほどいるその他大勢と変わらないものなんだって思っていた。 あの行為も嫉妬からきたものなのか。 それにしたってクズなことには変わりはないけど。 俺は驚きの連続で固まってしまうとヒロが顔を上げて俺を見据える。 その目は泣きそうで俺はなんとかしてやりたくなってしまう。 俺がヒロに甘いということを知っていてやってるんだからこいつはタチが悪い。 そんな瞳で見つめられたら顔を晒すことなんてできないのだ。 「こんなこと今言っても遅いってわかってる。でも俺にはミツルが必要なんだ。そばにいて欲しい。」 本当にもう遅いなんて思う。 もし俺がヒロに愛想を尽かしていたら絶対に聞き入れられない願いだ。 頭の片隅ではそんなことを考えながらも口の中で何度も俺にはミツルが必要という一文を反芻する。 ずっとヒロから欲しかった言葉。 俺だけじゃなくてヒロも俺を必要として欲しかった。 俺の目には悲しみや痛みからではない涙の幕が張る。 泣きそうな俺をヒロは手を伸ばしかけたがその手が空をきった。 変わりにくしゃくしゃになったポケットティッシュが渡される。 俺はそれを受け取って遠慮なく使いながら話す。 「お前、ずるいよ。俺がどれだけ長い間お前のこと好きだったか知ってるだろ。お前からのそんな願い断れるわけないじゃんか。」 ちょろい自分が嫌でせめても反抗の意を込めてヒロの頬を軽くつねる。 俺が何をするかわからないというきょとんとした顔がなんだか間抜けだ。 ヒロの顔に涙をこぼしながら俺は顔を近づけた。 「いいよ。ヒロのそばにいるよ。だからヒロも俺だけを見て。」 ここまで言って俺の顔はくしゃりと皺を寄せてしまう。 嬉しいはずなのに次から次へと出てくる涙を乱暴に手で擦る。 するとヒロがその手をそっと静止して俺の目尻に浮かぶ涙を指ですくう。 かつて俺を不安にさせた優しい手つきが今はなんだか落ち着く。 ヒロは涙が止まらなくなった俺をそっと抱き止めた。 視界にはヒロの胸板が、鼻腔にはヒロの匂いが広がる。 俺の顔の色々な水がヒロの服を汚した。 「ありがとう。大好きだよ、ミツル。ずっとミツルだけを見るよ。」 ヒロのいうずっとなんて信用できないと思う。 けど惚れた弱みがその言葉を信じる俺がいる。 俺はこのヒロが幻じゃないか確かめるために強い力で抱きしめ返す。 「俺も、、、、。俺もヒロが好き。」 ずっと喉に引っかかって言えなかった言葉を絞りだした。 この言葉を言ったらヒロが俺の前から消えてしまうんじゃないかって怖くて言えなかったこと。 音にしてしまえばたった2文字の空間の振動。 それでも俺達にとっては2人の気持ちをきちんと言葉にすることが難しかった。 高校生のころから今までの間に絡みあってしまった関係性が俺もヒロも縛りつけていたんだ。 賢いフリをして痛みをやり過ごそうとした俺と大切なものを失わないために臆病だったヒロ。 そんな不器用な2人だからきっとこんなにも時間がかかってしまったんだろう。 俺を抱きしめるヒロからは煙草の匂いがする。 ずっと焦がれていた香りを俺は肺いっぱいに吸い込んだ。 泣きじゃくる俺の背中をヒロは撫でる。 ヒロの強引に涙を止めようとはせずに俺を待っくれているのが嬉しかった。 俺は弱い人間だから優しい言葉をかけられても相手の本心を疑ってしまうから。 何も言わないで側にいてくれるだけでいい。 俺はしばらくの間ヒロの腕の中で泣き続けた。 体中の水分が抜け切ったのか涙はとまった。 「喉乾くだろ。これ飲んで。」 ヒロからは俺が出したのすっかり冷めたお茶を勧められた。 長く浸したから茶葉の味が出ていて渋い。 その苦味が俺の気分を落ち着かせた。 「ありがとう。」 俺の顔をみて安心したのかヒロもお茶をすする。 そして顔を顰めた。 「うわ、苦いなこれ。」 普段あんなにタールの含まれた煙草を吸ってる癖に渋いお茶に顔を顰めるなんて不思議だ。 でも俺がだしたお茶に文句の一ついうくらいには元気がでたんだろう。 玄関前で蹲ってたヒロよりもいつも通りな振る舞いになった。 やっぱりこいつの自分のペースで生きてるとこも好きなんだ。 言葉にした途端にタガが外れたみたいにヒロへの愛着が湧き出してくる。 ヒロの頬へと手を伸ばして口付けをひとつおとす。 「口直しする?」 ヒロは一瞬目を見開いた。けどすぐに 「ミツルもおんなじ茶飲んだから苦いんだけど」 なんて文句を言いやがった。 前ならここで折れてしまっただろうけど今なら大丈夫だ。 俺の少しの我儘ならヒロはきく自信がある。 「じゃあしないの?」 そう言いながら首を傾げるとヒロは俺の手を引いてベットに押し倒す。 上には余裕の無さそうなヒロの顔がある。 「する、、、。」 そう言ってヒロの顔が俺に近づく。 キスされるのだろうと思って瞳を閉じたのに何もない。 顔にかかる息からヒロはもう互いのまつ毛が触れ合うくらいの距離にいるのがわかる。 やっぱり気分じゃなかったのか。そんな不安が首をもたげて瞳をあけた。 「どうしたの?乗り気じゃない?なら無理すんなよ。」 少しショックだけど悟られないようになんてことないという口調をつくる。 声が震えてしまっていないだろうか。 声色だけはなんとかできても怖くてヒロの顔が見れない。 ヒロの返事は身構えて体を少しこわばらせた。 「違う。ミツルを抱きたいよ。でも前みたいにミツルを傷つけるかもと思うと怖い。」 よかった。俺を拒絶したわけじゃないんだ。 ヒロの返事で俺の身体の力は抜けた。 百戦錬磨の男がぶら下げられた餌を前に逃げ腰になっている。 前ならこっちの意思なんて関係なしにキスをして俺の理性をどろどろに溶かしたくせに。 なんでだろうと思って視線を逸らすと手首にまだうっすらと痣の痕が見えた。 たぶんこれを見て自分のしたことを再度思い出したんだろう。 けどヒロに傷つけられるのを怖がってたならヒロの側にいようなんて決めなかったし、そもそも家に入れなかった。 俺の覚悟を舐めないでほしい。 「大丈夫だよ。こんな傷もう治ってんだわ。それに今のヒロは俺を傷つけたりしないよ。信じてる。」 そう言って不安そうなヒロに口付ける。 驚いて半開きなヒロの口に無理矢理舌を捩じ込んで歯列をなぞる。 俺とおんなじ味がする口腔内で舌を動かす。 挑発するみたいに上顎を舌で突くとヒロは眉根を寄せた。 そしてヒロの舌が俺の舌先に触れる。 そこからピリリと小さな電気が流れたみたいな刺激がはしる。 もっとそれが欲しくて俺は舌を這わせるとヒロも答えるみたいに舌を動かした。 互いの口を貪るような口付けだ。 部屋の中には2人の息遣いと水音だけが響く。 空気の吸い方なんて忘れてしまって酸素が足りない。 それでももっと欲しくて必死に舌を動かす。 けどヒロはそんな俺の様子に気づいたのか唇を離す。 寂しくてまだ足りないという視線をヒロに向ける。 ヒロの唇は唾液で濡れていて光を反射していた。 それを指で拭う姿がなんとも言えない色気を醸し出す。 ヒロの唇から目が離せないでいると 「そんな顔すんなよ。ちゃんとわかってるから。」 ヒロは俺のおでこに軽く触れるだけのキスを落とす。 全然わかってない、俺が欲しいのはそんなのじゃない。 ムッとした顔をヒロに向けるとヒロはへらりと笑う。 困ったように下がった眉毛の下の目は俺の唇へと向けられている。 ヒロだって本当はしたい癖になんで我慢なんてするんだ。 そのことが気に入らなくて俺は乱雑にヒロに自分の唇を押し付けた。 閉じらた口を食べてしまうようにはみ、ヒロの下唇を軽く噛む。 その刺激にヒロの瞼が微かに動いたけど気持ちよさそうだ。 そう判断してさらにヒロの唇を味わおうとするとヒロの手のひらがふにりと唇に当てられて遮られる。 俺の求める行為が悉くかわされてなんだか少し惨めな気持ちになった。 恋人同士になる前のほうがお互いを求めあっていた気がしてしまう。 ヒロが何を考えてるのか知りたくてヒロの顔をみる。 予想外にもそこには奥歯を食いしばり変に歪んだ顔があった。 その歪んだ唇からくもぐった声がもれる。 「あんまり煽んな。お前のことぐちゃぐちゃにしたくなる。」 怒ってるようにも聞こえるその言葉に俺の期待は跳ね上がる。 今までさえヒロに触れらるとこ全て溶けるように気持ちよかったのにさらに上があるのか。 ヒロは俺を傷つけないために理性でそれを抑えつけてる。 その枷を外すために俺はヒロの手のひらを舐めて頬ずりをした。 「やだね。俺のことぐちゃぐちゃにしてよ。」 俺がそう言った途端にヒロは小さく舌打ちをする。 そして乱雑に唇を奪われた。 さっきのキスでも息ができなかったのにヒロの舌は俺の中を身勝手に動き回り俺は悶える。 苦しくて顔を離そうとするたびに少しの隙間も許さないというふうにキスの雨が降ってくる。 そして手は俺の服のボタンを乱雑に外す。 こんなキスをしながらノールックで器用に俺の服を脱がすのは流石といったところだろう。 はだけた服の隙間からヒロの手が入り込んで脇腹を撫でる。 きっちりと手入れされた指先が俺の胸筋をやんわりと揉む。 敏感になった体はその緩い刺激さえひろう。 ヒロは俺の胸を弄ぶみたいに寄せたり指を沈み込ませたりする。 口はヒロの唇で掻き乱されているのにやんわりとした胸への愛撫の緩急でおかしくなってしまいそうだ。 「ん、ふ、は」 くもぐった声が鼻をぬける。 流石にこれ以上は息が続かないと思ってヒロの胸板を力を振り絞って押し返す。 するとヒロの唇は離れていき最後に名残惜しそうに俺の口周りの唾液を舐めとった。 足りない酸素を取り込むように浅い呼吸を繰り返し、心臓は素早く脈うつ。 酸欠と涙で歪んだ視界の端にヒロの頭が見えた。 ぬるりと突然生暖かい感覚が俺の尖りを刺激する。 「あ、やめ。ん」 さっきまで触られなくて期待に熱を持っていたそこを飴玉を転がすように舐められる。 片方は指の先でぴんと弾かれて痛いけど気持ちがいい。 ヒロに触れられまでここがこんなに感じるだなんて知らなかった。 俺の体はヒロと体を重ねた回数だけ作り替えられているのがわかって羞恥からさらに体が熱をもつ。 ヒロの触り方は激しさを増していき指で押し潰されたり摘まれたりする。 もう片方は軽く歯が立てられた。 「う、あ、」 上しか触られていなのに俺の海綿体には血液が集まる。 それに気づいたヒロがぐりぐりと膝を押し付けてくるものだから逃げ場がない。 下と上からの快楽から俺の鈴口は精液をこぼし下着を濡らす。 すぎた快楽をやり過ごそうと体に力がはいる。 するとヒロはいやらしい音をたてて俺の乳首をきつく吸い上げた。 「あ、はああ」 俺は予想外の動きにあっけなく達してしまった。 下着が精液で濡れて肌に張り付いて気持ち悪い。 それに胸はヒロの涎でべちゃべちゃだ。 散々触られて敏感になったそこはヒロの吐息さえも快楽に変えてしまう。 そこを指で強く押されてものだから体が弓のようにしなった。 「ひ、んぐあ」 いったばかりの力の入らない体を好きにされてしまう。 ヒロの手が下へと伸びいていき下着ごと俺のズボンを脱がせた。 そこはねとりと粘着質な液体が糸を引く。 そのくせまた勃ち上がっているんだから恥ずかしくて股を閉じようとする。 でもヒロが俺の膝裏を持ち上げるからできなかった。 腰の下に枕をしかれて俺の秘部が丸見えになってしまう。 間抜けなポーズに思わず顔を背けると窄まりの入り口をヒロが指の腹で撫でる。 皺の一つ一つを確かめるみたいに触れる手つきがもどかしい。 それでもさらなる刺激への期待からか俺の腰はうく。 するとヒロの手が俺の後ろから離れてしまう。 俺のそこは行かないで媚びるみたいに開閉した。 もしかしてシマさんに抱かれたことがわかってしまってここでやめられてしまうかもしれない。 そんなことを考えて馬鹿な自分に嫌気がさして生理的でない涙が一筋溢れ落ちた。 突然生暖かい感覚が俺の後孔におとずれる。 びっくりして上体を起こしてみるとヒロが俺のそこを舐めていた。 「や、やめろよ。そんなとこ汚い」 こんなことをされたのは初めて戸惑ってしまう。 やめさせようとヒロの頭を掴んで上を向かせた。 けどヒロの顔が俺のそこにある事実がより明確に視界に飛び込んできて逆効果でしかない。 「なんで?気持ちよくない?」 ヒロはそう言って動きを再開する。 さっきまでは舐めるだけだった舌先が中へと侵入してきた。 まだほぐしきれていないそこはヒロの舌を締め上げる。 けどヒロの下は器用に俺の浅い所を撫でつけた。 「う、やん」 俺のヒロを掴んでいた手は徐々に力を失っていく。 舌の感覚に悶えているともう一つの異物感が俺をおそう。 ヒロの指が俺の中へと入ってきたんだ。 舌よりも奥に届くそれは俺の前立腺を押し込む。 その瞬間に俺の脊椎にびりりと電流がはしる。 排尿感にも似た快楽が俺をおそう。 浅い所は舌で俺の弱いとこは指で触れられて俺は叫声をあげることしかできない。 気づいたときには俺のそこは3本も指を加え込んでいた。 俺の精液とヒロの唾液が下品な水音を出して泡立つ。 その音が頭に響いて耳からも犯されてるなんて錯覚する。 腸壁は異物を押し出すためでなく快楽を得るためにうねっていた。 加えてもう片方のヒロの手が腹の上からも前立腺をグッと押し込むのだからおかしくなってしまう。 ヒロが上も下から同時にそこを押し込んだときに一際大きな波がきて俺の足は伸び切った。 「う、あ」 本日2度目の射精をする。 これだけ出しても萎えることのないそれはもう硬度を持ち始めていた。 ヒロは俺の精液を腹筋に塗りつけるように撫で上げる。 そして指で掬い上げて見せつけるみたいにもてあそんだ。 2本の指の間で粘っこく糸を引くそれが俺の欲情を煽った。 空いてしまった隙間を埋めるように俺の後ろはひくつく。 ヒロが俺の髪を撫でながら甘えるみたいに 「ミツルの中、入ってもいい?」 俺はヒロを抱き寄せた。 ヒロと俺の体を隔てる衣服が煩わしい。 俺は全身でヒロを感じたいんだ。 ヒロの耳元で吐息よりも小さな声で囁く。 「服脱いでくれないとやだ。」 「ん、わかった。」 そう言ってヒロは俺の首筋にキスを落とした。 そして着ていた服を乱雑に脱ぎ捨てる。 薄いけど鍛えてもないのにバランスのよく筋肉のついた体が現れる。 そしてズリ下げられたズボンからは今にも破裂しそうなほど膨らんだ陰茎が露呈した。 思わず見惚れているとヒロは口でゴムの封を切って慣れた手つきがつける。 この時間は3秒にも満たないだろう。 「じゃあ、挿れるね。」 ヒロがそう言うと俺の後ろに熱いものがあてがわれる感覚があった。 そしてそれはゆっくりと俺の中を押し広げる。 腸壁の皺が伸ばされてそれへと馴染む形へと変わっていく。 この圧迫感は初めは苦痛でしかなかったのにその先を知る俺にとっては快楽となる。 はやくはやく奥にきて欲しい。 せがむみたいに俺はヒロの体に足を巻き付ける。 がヒロのぶつが俺の前立腺を掠めた瞬間に全身が力む。 「ん、あ」 俺のその反応をみてヒロは顔に意地悪そうな笑みを浮かべた。 そして浅い所から前立腺までを行き来する動きをし始める。 何度も押し寄せる快楽の波に俺は耐えるしかない。 たぶんこのままだとまたイッて意識を失う。 長年の経験から俺はそう判断する。 せっかく両思いになれて初めて体を重ねるのに意識をなくしてしまうなんてもったいない。 俺はヒロから与えられる快楽に悶えながら必死に声を絞りだした。 「いや、だ。いっしょがい、い」 途切れ途切れで聞き取りににくいだろうその声を聞いた瞬間に中のものの質量が増す。 そして浅い所を行ったり来たりする動きが中断されてヒロの陰茎がいっきに体内へと入り込んでくる。 その刺激に思わず達してしまいそうになるのを関節が白くなるほどシーツを握りしめて耐えた。 「ミツル、つかまって。」 ヒロはそう言って俺の手を肩へと回す。 握りしめた手の平は上手く力が入らなくてヒロを抱きしめることができないくて、わずかに空いた数センチの隙間がもどかしい。 ヒロは俺な手が離れてしまわないように器用に奥へ奥へと進めていく。 ヒロからつたう受け止めながらヒロの顔を目に焼き付ける。 時折みせる歯を食いしばるような顔が俺だけじゃなくてヒロも感じてるんだとわかって嬉しい。 お互いに限界が近いはずなのに少しでも長く繋がっていたくて前座とは打って変わって穏やかに行為が進む。 微睡の中にいるようなゆるい快楽が突然、切り裂かれる。 とちゅりとヒロのものが奥まで届いた感覚があり瞼の裏に火花が散った。 「は、あ」 喉仏を上に晒せて浅い呼吸を繰り返す。 パズルのピースがはまったようにヒロのそれはよく俺に馴染んだ。 ヒロは俺を気遣うみたいにゆるりと腰を動かす。 奥はドアをノックするようにトントンと優しく突かれる。 ヒロの律動に合わせて体が揺れる。 ゆったりとしたリズムは徐々に速さを増していく。 皮膚のぶつかり合う音や俺の後孔の中で粘液が混ざる音が大きさを増す。 ヒロの呼吸がやけに大きく聞こえてくる。 俺の下半身には甘い痺れが溜まっていく。 一突きされるたびに思考が抜け落ちていってしまう。 そんな中でヒロの体が遠いのが寂しくて俺は必死でヒロを手繰り寄せた。 「ひ、んぐ。あ。」 ヒロとの距離が縮まりヒロのものがより深く抉るような角度で突き立てられる。 普通なら痛いと感じるその動きでさえも俺は快楽に変える。 互いの体が汗でぴったりとくっつきヒロの腹筋に俺のものが擦り付けられた。 前も後ろもヒロによってぐちゃぐちゃにされてしまう。 真っ白な頭の中で俺はヒロの背中に爪を立てながら 「ヒロ、すき、あん、だいすき、すき」 長年溜まってきた思いを叫び続ける。 俺がすきと言うたびにヒロのものは硬さを増した。 「ミツル、ミツル。俺も、んは、すきだよ」 ヒロが俺の名前を呼ぶたびに俺はヒロの陰茎を締め付けてしまう。 どくどくと早い鼓動と痛いくらいに張り詰めたそこが限界が近いことを示す。 ぐりとヒロのが奥へと届いたときに俺の思考は止まった。 そしてびゅるりと精を吐き出す。 同時にヒロのもの中で硬さを失った。 ヒロは出したものをなすりつけるようにぐりぐりと腰を動かす。 それがいったばかりの体には痛いくらいに気持ちがいい。 ずるりとヒロのものが出されたときに俺の後ろはいやらしい音を立てながら潤滑油を吐き出した。 押し広げられたそこはぱっくりと縦に割れてヒロ専用の形をしていた。 室内に2人の息遣いだけが響く。 さっきまで壊れるように脈打っていた心臓が一定のリズムで動き出す。 それと比例して快楽に浮かされていた肌も徐々に冷めていく。 全てを出し切った俺の頭に浮かんだのはルーティンだった。 「たばこ、たばこ吸いたい。」 独り言のように天井を見つめながら呟く。 するとヒロは脱ぎ捨てた服から煙草とライターを取り出した。 そして2本とって1つを俺に差し出す。 受け取りながら横目でヒロをみる。 カチリと音がして火が煙草に灯る。 長くて黒いまつ毛がその淡い光に縁取られる。 それに見惚れているとヒロが不思議そうな顔をしながら 「吸わんの?」 と問いかけるから俺は慌てて火をつけて煙を吸い込んだ。 瞬間、さっきまで叫んでいた声帯に不快な痛みが走って咳き込む。 「げほ、ごほ。」 生理的な涙で俺の視界は霞む。 するとヒロは俺の手からするりと煙草を奪いとる。 加えて自分の煙草の火も消してしまう。 「無理すんなよ。声ガラガラじゃん。」 「誰のせいで、、、。」 「ごめん。これで我慢して。」 そう言ってヒロは俺に口付けた。 軽く触れるだけのキスなのに懐かしい香りが香った。 それだけで俺の心は満たされる。 そして瞼が鉛のように重くなり目を閉じた。 翌朝、体にかかる重みで目覚める。 ヒロの手が俺を抱き抱えていてた。 脱ぎ捨てられたままの服、カピカピに乾燥た体が昨日のことを思い出させる。 片付けをしなくてはと思いながらもまだこの幸せな重みに浸っていたくて体の怠さを言い訳に二度寝をすることにした。 こんな幸せな朝が俺にくるなんて考えたこともなかった。 そしてこんな日はずっと続くなんていう根拠のない自信に身を任せた。

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