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プロローグ

 僕、坂本大智の初恋の話をしよう。  遠野璃音。その男はやたら目立つ金髪にピアスをジャラジャラつけて、周りには常に人がいて、そのくせ朗らかに笑う、いわゆる陽キャというやつだ。  高校の入学式から金髪で登校して生徒指導室に呼び出されていたが、その後も黒染めする様子はなく、しかし遠野は頭が良くて成績はいつも上位をキープしているから、次第にうるさく言う教師もいなくなった。容姿が派手というだけで、ケンカをすることもなくクラスのムードメーカーである。  対して僕は黒髪にメガネと見かけは優等生に間違われることも多いが、成績はボロボロで進級も危ぶまれたほどだ。  何とか二年生になり、遠野とも連続で同じクラスだった。そんなある日、遠野が放課後の教室で女子とキスをしているのを見かけてしまった。  僕はいつも何かしら学校に忘れ物をしては、それを取りに戻るのが日常で、その日はたまたま校舎を出る前に気付いたので、まだ生徒がまばらに残っている時間帯だった。  何も考えずに教室のドアを開けた瞬間、窓を背にしていた遠野が驚いた表情でこちらを見て、そして女子を腕で隠すような仕草をした。  僕は慌ててドアを閉めて、忘れ物も置いたまま、駅まで全速力で走った。走ったら体力不足でフラフラになって駅のベンチで休んでいると、いつの間にか近寄ってきていた遠野に声をかけられた。  間近で見ると整った顔立ちをしていて、どこのブランドの香水なのか良い匂いまでして、これは女子が放っておかないよなと思う。  遠野は放課後とはいえ、校内で油断したのは自分なので、彼女のことを話題にするのは避けてほしいと頼んできた。僕は元より誰かに話すつもりはないし、後ろ姿だけしか見ていないのであの女子が誰だったのかも分からない。それに僕にはそんな話をする友達はいないと言うと、遠野はおかしそうに笑って、俺と友達になるかと尋ねた。  それに大きく頷いて、友達としての地位を得ることができてから、僕の恋心は急速に高まって行った。

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