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第21話

最近、キヨの調子がすこぶるいい。 前までは、俺たちの音なんてほぼ聞いていない独りよがりな演奏だった。 今はハルの音を聴いていて隙をつくみたいにハルに噛みついてくる。 ハルもキヨの音の変化を感じたのだろうか。 キヨの調子に反比例するみたいにハルの調子は下がっていった。 そしてハルは以前の周りを巻き込む自由な音じゃなくて、誰にもキヨを取られまい、俺を見ろという悲痛な音に変わっていた。 焦るみたいな歌い方は迫力があるが、見ているこっちは心配になる音だ。 ハルの喉のことを考え、俺たちは練習を切り上げた。 キヨもハルの音の変化に共鳴して、辛そうだ。 こんな状態じゃ、ライブなんてできたものではない。 だから、ライブに出るのもやめた。 変わったキヨをハルは受け入れられない。 2人は一緒にいるだけじゃダメなのだ。 どうすればいいんだ。 バンドを守りたいのに何もできない自分に苛立ちを覚える。 凡庸な自分には天才2人を繋ぎ止めるなんて無理なのか。 なんとかしなければという焦りだけつのる。 ハルが日に日にやつれていく。 そんなハルが死なないように、飯を食わせ、風呂にいれ、寝かせてやる。 出口のないトンネルを進んでいるみたいだ。 そんな日々で俺は徐々に摩耗していった。

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