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第22話
「真也さん、スタジオ来てください。あと、晴彦さんも連れてきてください。」
そんな中、キヨから電話がかかってきた。
覚悟の決まった声をしていて、俺が守ってやらないといないキヨはいなかった。
スタジオに行くなら演奏するのだろうと俺は自分のスティックをもち、バイクに跨り返事をした。
ハルの家につき、ハルとギターを引っ掴んで乗せる。
俺はスタジオまで、法定速度ギリギリで向かった。
スタジオから出て行こうとするハルを止めているとキヨがきた。
キヨは黙々とベースのチューニングを始める。俺もキヨの考えを察してドラムを準備する。
ついでに、ハルのギターもチューニングした。
「1.2.3」
いつもはハルのカウントで始める曲をキヨのカウントで始めた。
キヨがベースを掻き鳴らす。
その音はハルに向けての音だった。
いつもこの曲の初めは、ハルの好きな音を鳴らしていたけど、今日は鳴らしてやらない。
キヨのための音を俺は叩く。
必死なキヨをカバーするために、俺もキヨに死物狂いでついていく。
キヨの音がハルを救ってくれたらという希望をキヨの細い背中にたくしながら。
すると、ハルがギターを持って俺たちの演奏に加わる。
その音は、ハルの周りを巻き込む自由な音をしていた。
負けじと、キヨもハルに噛み付く。
普段の何倍も熱量のある2人に当てられて俺は2人に食らいついてやった。
すると、ハルは一瞬、嬉しそうな顔を見せた。一曲演奏した後、俺たちは汗だくだった。
心地いい疲労感に浸っているとハルが口を開いた。
「お前ら、最高だわ。お前らとやる音楽が一番好きだ。」
「俺、間違ってた。お前らの音は俺のもんだと思ってた。でも違う。お前らを俺のものにするより、殴り合うほうが楽しいわ。これからも俺と喧嘩してくれよ。」
違う。
ハル、間違えていたのは、俺なんだ。
天才の2人の間には入れないって、自分の才能のなさを言い訳にして、お前を1人にした俺なんだよ。
でも、ハルの真っ直ぐな瞳を見るとそんな後悔は吹き飛んで、俺たちは笑って返していた。
「臨むところだ。です。」
その後、俺たちはアホみたいに演奏した。
俺たちのバンドの演奏で一番いい音がでていた。
夢中で演奏していると明け方になり、俺たちスタジオをでる。
ハルとキヨは2人きりになりたいだろうと気を利かせて、2人で帰らせてやった。
多分、ハルはキヨに告白する。
でも、キヨはハルを振るだろう、あいつはハルを尊敬してるけど、もっと大きな存在が心にいるから。
落ち込んで帰ってくるハルを慰めるため、別ルートでハルの家まで向かう。
ハルの好きな甘い卵焼きを作って待っていよう。
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