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38.キツネ顔
昼飯は何にしようと考えていると、部屋のインターフォンが鳴った。
俺の部屋のインターフォンが鳴るのはとても珍しい。ネット注文した物が届くかご飯をデリバリーした時ぐらいだからだ。でも今は何も頼んでいない。
心当たりがないから恐る恐るモニターを見てみる。
モニターには肩まで付くぐらい長い髪のサラサラストレートのピンク頭、切れ長で目付きの悪いお人形さんみたいな顔した男が映っていた。
うわ、ルナじゃん。居留守使っちゃおっかなぁ?だってルナってうるさいし?てか連絡も無しに何しに来たんだよ。
ルナは同じデートクラブに在籍しているキャストで、たまたま事務所で会って話す内に何か懐かれてしまった。たまに連絡が来たり、こうして家に来たりとちょっと迷惑な奴。
歳は23歳。見ての通りお人形さんのような綺麗な容姿をしているけど、目付きが悪く、俺はキツネみたいだなと思っている。
俺が一人でゲッと言う顔をしていると、更に呼び出し音を押される。こいつ、帰る気ねぇな。
俺はため息をつきながら応答ボタンを押した。
「何しに来たんだよ?」
『よう伊吹~♪酒持って来たから飲もうぜ~♪』
「こんな時間からぁ?まぁいっか……」
酒に釣られてキツネ顔を部屋に入れる事にした。
ルナはうるさいけど、悪い奴じゃない。と思う。見た目は綺麗だけど、口が悪かったりする所が俺と似てるからか嫌いにはなれなかった。
マンションの下の鍵を開けてやると、しばらくしてからルナが部屋にやって来た。
本当に酒を持って来たようで、つまみもあった。俺の機嫌は良くなる。
「相変わらず良いとこ住んでんなぁ~♪さすがうちの看板息子♪」
「うるせぇ」
ルナはニシシと嬉しそうに笑って我が家のように持って来た酒類を冷蔵庫に閉まっていた。
俺とルナは歳は違えど経歴はほぼ一緒。ルナは20歳の時にこの仕事を始めて、俺はルナより1ヶ月前に始めた。
つまり俺は22歳でこのバイトを始めて、それからずっとこの生活を送っている。こんなに長く続けられたのはやっぱりこの顔のお陰だ。
「伊吹最近どーよ?」
「いきなりだな。普通だよ普通」
缶ビールを手渡されて立ったまま乾杯ってジェスチャーをやられる。
俺は何も感じずに自然と缶ビールを開けて軽くルナの持ってる缶ビールに当ててからグビっと飲む。
昼間からのビール最高~♡
「普通ね~。毎週土曜の客ってどんな人なの?」
「何でお前が知ってるんだよ」
「いや、伊吹のスケジュール見りゃ分かるって。毎週土曜はフルで指名入ってるからだよ。同じ奴だろ?」
やっぱりアレを見たら分かるか。
いきなり毎週土曜日は出勤と同時に全時間フルで埋まるもんな~、ルナはそれが気になって聞きに来たのか。
俺は客の事は他の客の詳細などは、他の客だけじゃなく、他のキャストにも話さない。トラブっても面倒だからだ。反対にルナはそう言うのを共有したがって、俺の客の事をやたら気にして来るんだ。
そういうのも面倒くさい。
ちなみにルナも性別不問で誰とでもデートをする。俺よりも女顔なルナの方が男性客は多いと思う。ルナの話を聞くだけだから本当かは分からないけどな。
そしてルナは客と平気で寝る。好みの相手だったらその場の気分で、好みじゃなくても金を積まれれば寝る。そんな男だ。
「秘密~♪」
「出た!伊吹って隠したがるよな~」
「てか今日はオフだし、仕事の話したくねぇの」
「なぁ、寝た?」
「ブッ!!」
ルナの質問に俺は飲んでいたビールを吹いた。
いや、こんな質問は毎回される。なのに今回は何故か動揺してしまった。
尚輝くんと寝たかって!?寝たっちゃ寝たけど、添い寝だ!!てか寝たと言えばタイガーとなら本当の意味で寝たぞ!?
って危ない危ない!この事がルナにバレたら終わる!
絶対にバレないようにしなければっ!
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