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65.ポジティブな男
流れる沈黙……と思いきや、気まずいと思っていた雰囲気だったのに、タイガーはいつもの感じで話し始めた。
「分かった!俺と伊吹が両想いだから必要ねぇって言ってるんだな」
「は?俺とお前がぁ?」
「伊吹が俺を好きなのは知ってるけどよ、本当にナオキングは良い奴なんだよ。だから意気投合して、二人で伊吹の事で盛り上がったりもして……だからナオキングにはお互い頑張ろうって言っちまったんだ」
「待て!お前本気で言ってんの?」
「おう!俺は伊吹が言うならナオキングにも本当の事話して諦めてもらうぞ。もう無駄な勝負は辞めようってな」
そうだった!
こいつは馬鹿だった!
とんでもない事言ってるけど、多分本気で言っている。むしろふざけてて欲しいけど、タイガーはこういう男だ。
尚輝くんにそんな事言ったら、まだ俺の気持ちも伝えてねぇし、勘違いするじゃねぇか!
「ダメだ!尚輝くんには何も話すな!お前は尚輝くんとは仲の良い友達を続けろ!」
「え♡何もってどこまで?今さっき伊吹が会いに来た~って送っちゃった♡」
「馬鹿野郎!!何て事言ってんだ!!」
それはマズいぞ!
俺は客とは店を通してじゃないと会わないで謳っているのに、他の客とはプライベートで会ってるなんて尚輝くんに勘違いされたら……ああっ尚輝くんとですらプライベートでは会った事ないのに!!
とにかくこれ以上タイガーと関わるのは危険だな。こいつは他の奴とはズレている。それも大幅にズレてるから手に負えない。
めちゃくちゃ気まずい感じだったのに、持ち前のポジティブ発揮させて無理矢理ハッピーエンドにさせようとするとか、どんなけメンタル強いんだって話!!
おっと、こうしちゃいられん!
タイガーが余計な事言ったから尚輝くんにフォロー入れないと、あの子ピュアだから間に受けてショック受けてるに違いない。
さっさと帰って尚輝くんに連絡しなきゃ!
俺は何も言わずに、金をその辺に置いて玄関へ向かおうとすると、タイガーも付いて来た。
ふん、寝起きで寝癖頭のままじゃ外まで付いて来られまい!
「伊吹待って~」
「待たない!お前とはこれでサヨナラだ!もう予約入れんなよ!」
のろのろと付いて来るタイガーを置いて俺は玄関のドアの鍵を開けて、ドアノブを捻って外へ飛び立つ!
が、ドアを開けて目の前に現れた人物に俺は目を丸くして固まった。
な、何で尚輝くんがここに!?
「伊吹さんっ!」
「な、な、何でっ!?」
タイガーがチクったってのは本当だったのか、息切れして心配そうな顔して立っている尚輝くんに、俺の心は痛んだ。
まさかこんな形で会うなんて……
ここで更に俺に悲劇が襲う。
俺に追い付いて来たタイガーが固まってる俺に背中から容赦なく抱き付いて来たのだ。
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