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69.25歳の告白

   もっと一緒にいたいと思った時に、角を右に曲がり少し歩くと学校が見えて来た。   「あそこが学校か~、そんじゃ俺はここらで帰るかな」 「はい、お気を付けて」  尚輝くんと別れて帰ろうと思ってふと考える。次に会えるのは予約を入れてくれた土曜日か。  でもそれは店を通してだ。いつものように尚輝くんが店に金を払って俺はその金の分の時間を尚輝くんと過ごして給料を貰う。  何かモヤモヤするなぁ。  俺が黙っていたら、尚輝くんが変に思ったみたいで心配そうに覗き込んで来た。 「あの、伊吹さん?どうしました?」 「いや、ちょっとね~」  俺は考える。尚輝くんとは店を通さずに会いたい。でも土曜の予約が無いと正直、金銭的に厳しいのもある。  あ、そうだ!こうしよう! 「尚輝くん、急で悪いんだけど、俺土曜日休むから」 「え?急用ですか?」  尚輝くんが動揺してるのが分かる。それでも予定が入ったのかと怒ったりせずに聞いてくる尚輝くんが健気でキュンとした。  だから俺はニッコリ笑ってこう言ってあげた。 「そ♡急に本命とデートがしたくなっちゃってさ〜♡店にはこれから連絡するから、尚輝くんはそのままでいて。店から連絡来るから適当に分かりましたって答えておいてよ」 「……本命?」  目を大きくして、驚いてる顔をする尚輝くん。  俺は仕事を休みにして、普通にプライベートで尚輝くんとデートをしようとしていた。  代わりに日曜出勤にすれば、急だけど誰かしら予約入れてくれるだろ。   「あの、伊吹さん……その、本命って……どういう事ですか?」 「実は最近好きな子出来てさ~。今からその子に土曜日会えるか連絡してみるんだ」 「伊吹さんっ」  どんどん焦ったような顔になる尚輝くんに、ちょっと意地悪し過ぎたかなと俺は耐えきれず、スマホを取り出して目の前で好きな子に電話を掛ける。  すると、すぐに尚輝くんのスマホが鳴って慌てて画面を見て、また驚いたような顔をして俺を見て来た。    可愛い過ぎる♡  俺なりの告白なんだけど、伝わるかな? 「あれ~?出ないなぁ?俺の好きな子は今忙しいのかな?」 「えっえっ?伊吹さん?あ、も、もしもしっ!」  スマホの画面と俺を交互に見て、察したのか、必死な表情を浮かべて俺からの電話に出る尚輝くん。  そして俺はそのままスマホを繋いだまま、尚輝くんを真っ直ぐに見た。 「もしもーし。急なんだけど、土曜日仕事休むんだ。もし予定無いなら俺とデートしない?」 「あ……あの、し、します!デートしたいです!」 「良かった♡そんじゃ夜にでも予定立てようぜ♪学校頑張れよ」 「はいっ!ありがとうございますっ!」 「あ、大事な事言うの忘れた。大好きだぞ尚輝♡」 「!!!!!」  俺は恥ずかしかったけど、尚輝くんの事を想って精一杯の笑顔で告白をした。  この歳になってこんな告白の仕方するとか、めちゃくちゃ恥ずかしいな。    俺の行動、言動に終始驚いたり落ち込んだりの尚輝くんだったけど、俺が「大好き」と言うと、頬を赤く染めて今までで一番驚いた顔を見せた。    もっと話してたかったけど、これ以上は尚輝くんも学校があるし、電話を切って帰る事にした。 「じゃ本当に帰るわ」 「伊吹さんっ!俺も大好きです!土曜日、今までで一番楽しみにしています♡」  照れたように笑う尚輝くんに、俺は手を振って答える。  そして背を向けて横断歩道を渡り、尚輝くんとは違う方向へ歩き出す。  いきなり告っちまったけど、尚輝くんの事だからこの後タイガーとの事で悩みそうだな~。  あいつと変な同盟組んでたし?その同盟も俺の告白によって破綻する訳だもんな。    そこら辺もフォローしてあげたいな。  尚輝くんはタイガーと友達になれて本当に嬉しいみたいだから、出来れば仲良くやってって欲しい。    その為にはやっぱり仕事変えるしかねぇか!  俺は好きな人への告白と共に自分の将来の事も含めてライフスタイルを見直そうと思った。  今度こそ本気で。収入が途絶えるのは避けたいから上手く今のバイトを続けながら仕事を探そう。  好きな人へ想いを打ち明けた事によって俺の心は驚く程に晴れていた。  こんな気持ちは久しぶりだな。  ドキドキして、ワクワクするような今ではあまり感じなくなった新鮮な気持ち。  きっとこれからもこの気持ちを多く感じる事になるだろう。  俺は若返ったつもりで家までの道を、気分良くゆっくり歩いて帰った。

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