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一つ目

  ───・・・この世には、人間でない生き物が密かに人間社会に紛れ暮らしている。 ヴァンパイアやメデューサや魔女もその一部に過ぎない。 そして、今ここに居る男もその一人に過ぎないのだ。 「……今日は満月か…最悪だな」 闇に溶け込めるような服装と裏腹に、彼の髪は毛先の先までが美しい銀色をしていた。 深夜0時の街中は、朝に比べると物静かで人もあまり出歩いていない。 それでも彼にとっては耳障りな音が聞こえてしまう。 血を餌とするヴァンパイアと超身体能力を身に付けているウルフの子孫である大神 眞澄(おおがみ ますみ)はヴァンウルフの一族である。 「……真田に会いてぇ…」 「おっ、やっぱりここに居たか。眞澄」 「っ真田……今日は近寄んなっつったろ」 「知ってる。けど、やっぱ心配でさ」 「俺はお前が心配なんだよ……人間のお前になんかあったら、俺は自分を許せなくなる」 ビルの屋上に現れたのは、彼の恋人である真田 ユズルだった。 彼とは違って人間である真田は漆黒の髪を靡かせながら、罰の悪そうな顔をした彼の側に近付いてくる。 「近寄んなよ」 「大丈夫だって。オレはお前を信じてる」 「……ったく、こっちの身にもなれよ馬鹿」 付き合って早半年になろうとしている彼の恋人は、彼がヴァンウルフという事を知っていながらも彼から離れようとはしなかった。 事の始まりは、同じ会社で働いていてたまたまこの屋上に出くわしたのがきっかけである。 闇が似合わないような真田のコロコロと変わる表情に彼は一目惚れをした。 けれど、それは彼らにとってはあってはならない事だったのだ。  

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