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二つ目

  ヴァンウルフとは、いや狼にとって誰かを好きになるという事は生涯をその者に全て捧げるという事。 一途で浮気もしないと同時に、その者の全てを愛し欲情する。 だが、彼は人間を愛した。 彼らと人間では生きる時間があまりに違い過ぎていて、特に一人しか愛せない者は人間を愛してはいけないというルールがあった。 禁断の恋をしている彼らだが、様々な困難と問題が待ち構えている。 それでも真田は言ったのだ。 彼がヴァンウルフだと明かした時に。 『それでも構わない。死ぬ時が来たら一緒に逝こう。そうすれば眞澄は独りじゃないだろ?』 『オレも、もうお前以外誰かを愛せないから』 あぁ、コイツはなんて奴なんだと思った。 彼も真田も互いに依存していた。 突き放すにはもう遅かったのだ、お互いに。 「……なぁ、真田」 「二人の時はユズルって呼べよ」 「…ユズル」 「んー?」 「本当に……俺でいいのか?」 「…お前以外無理って言った」 真田は少し拗ねたように彼を上目で睨むが、彼にとっては煽っているようにしか見えない。 それでも今日は、満月の時だけは真田を抱かないと決めている。 だから顔には出ないが必死に理性と戦っているのだが、真田は煽るのが上手いので困りものである。 「それはそうだが……」 「なんだよ?眞澄はオレと居たくないの…?」 「違うっ…ただ、好きな奴の幸せを願うのは人間でも同じだろう?」 「オレは幸せだよ。お前の側に居られるなら、どんな事だって出来る。それぐらい、もうお前以外無理なんだよ…」 「ユズル…」 「それに、オレをこんな身体にしたのに責任放棄なんて誰が許すと思ってんの」 真田はそう言って自ら彼の唇にキスをした。 「っユズ…ル…お前……分かって、んのか!?」 彼は驚き目を見開くと、真田から離れて怖い顔をしてから叫んだ。 「分かってるよ。…だから、そろそろ試してみない?満月でもヤレるか」 「無茶だっ…言っただろ!…満月の日は理性が効かないから人間では耐えられないって!!…下手したら、死ぬんだぞっ」 「だからって眞澄が苦しむ姿見てるなんてオレには無理だっ!」 「っ!?」 「眞澄、言ってたじゃん……満月の日はいつも以上に飢えるって。なのに、なんもしないでやり過ごすとかキツいだろ」 確かに、飢えて堪らないが…今までだって耐えて来た。 今日だって耐えられる。 なのに、どうして真田の方が苦しそうな顔をするのだろう。 次第に真田の瞳から涙がポロポロと零れてくるのを見てまた彼は驚いた顔をした。 「ユ、ズル…?」 「…分かってる…分かってるけどっ……眞澄がオレを想ってる事も、大切にしてくれるのも…ちゃんと分かってるんだ。でも、やっぱり不安になるんだよ…オレじゃなかったら…人間じゃなかったら眞澄は我慢なんかしなくていいし、満月の日でもオレ以外ならって!」 「っユズル」   

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