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第21話

別れ際、駅の入口で足が止まった。 昼間の人通りが少しずつ夜に変わり始めている。 「今日はありがとな」 彼が言う。 それは、社交辞令みたいに軽い言い方だった。 「こちらこそ」 これ以上、続く言葉が見つからない。 ここで終わる。 そう思った瞬間だった。 「なぁ」 呼び止められて、振り返る。 彼はスマホを手にしたまま 少し視線を彷徨わせている。 「来週、空いてる日ある?」 思ったより普通の聞き方だった。 だからこそ、胸の奥が大きく揺れる。

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