46 / 76

第46話

いい匂いがして目が覚めた。 胃が、先に反応する 頭はまだぼんやりしているのに 香りだけが、やけに現実的だった。 キッチンの方から 鍋の音 覗くと 彼が背を向けてたっている 「起きたか」 振り返らずに言う。 皿に盛られたそれは リゾット…みたいなものだった 「食える?」 頷くと 当たり前のようにスプーンを渡される 1口 温かくて優しい味がした。 ちゃんと体のことを考えて作った味 気づけば全部食べてた 「よし」 彼はそれを見て満足そうに息をつく。 「飯食ったの見たし俺、帰るわ」 一瞬、胸の奥がすっと冷えた 「…そっか」 言葉はそれだけ 彼が玄関にいくのでついていく。 靴を履いて俺の方を振り返る。 小さくクスッと笑う。 何でもないみたいに頭に手を置いた。 「また飯行こうな」 それだけ言ってドアが閉まる 静かになる部屋 -今のは、なに 考えそうになってすぐやめた 期待しない、現実を見る ただの看病 ただの食事 そう言い聞かせながら まだ残っている匂いから目を逸らした。

ともだちにシェアしよう!