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第52話
次に会ったのは
それから数日後だった。
彼からの連絡はいつも通り
「今日行ける?」
あの夜のことは一言も触れない
店も前と同じようなところ
彼は先に来ていて手を挙げる
「おつかれ」
それだけ
隣に座って、注文して、料理を待つ。
仕事の話
最近の天気
どうでもいい雑談
どこにも隙間はない
あの時
急に抱きしめられたことも
慌てた顔も
何事も
なかったみたいに
料理が来て箸をとる
普通に美味しい、
それが少しだけ怖かった。
「どうした」
彼が言う
「いや」
首を振る
言えない、聞けない。
あれはなんだったのか
もし聞いたら答えが返ってきそうで
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