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第1話 孤島に移り住んで……

    SideA 星輝  胎内で共に、羊水をたゆたっていたときから役割分担はできていた。三十数分早く産道をくぐり抜けた、おれの使命は弟に無償の愛をそそぐことだ──と。  ()れ終えてほんの数回、腰を振った程度で精が放たれた。  早っ。聖沢星輝(ひじりさわせいき)は枕に顔を埋めて毒づき、嗤った。前戯は雑で、粗チンの早漏。見事なまでの三重苦だ。 「奈月(なつき)……きゅうきゅう(なか)をうねらせて、俺を先にイカせて、悪い子だ」  などと、汗をしたたらせながら覆いかぶさってくる男を押しのける。星輝はベッドの上に起きあがると、ローションでべたつく陰門をティッシュでざっとぬぐった。  いわゆるハニートラップの最終工程とはいえ、自分を安売りするセックスは忍耐力を試されているようだ。  ラブホテルのシーツは変にごわごわして、むき出しの尻がむず痒いったら。 「奈月? エッチしといて『人違い』で、すむと思う? おれは星輝、奈月の双子の兄」  へっ? とマヌケ面をさらす相手を()め据える。  萎えたペニスにしがみつくようにコンドームがぶら下がっているさまが滑稽で、噴き出しそうになるのをこらえるのがひと苦労だ。ゲス──田中なんとかは奈月の新しいバイト先の店長。害虫を識別するデータなど、それで十分だ。 「おいおい面接をするさい学生証を確認させてもらったよな。きみは聖沢奈月、別人のふりをするとは悪ふざけがすぎるぞ」  鷹揚(おうよう)ぶって笑い飛ばし、にじり寄ってくるのを足の裏で押し返す。そして星輝は、ぐいと顔を突き出した。 「よぉく見てみな。おれの二重(ふたえ)の幅のほうが奈月より〇・五ミリ広い」  と、ヒントを与えられてもA難度の〝まちがいさがし〟の数十倍は難度が高い。聖沢兄弟の顔面に、ホクロや痣といった特徴はない。  文字通り、瓜二つの一卵性双生児。おそろいの服装をして現れたら、両親でさえまごつくほどだ。  ひとり二役を演じて俺をからかうつもりでいるのかもしれない。田中は(あごひげ)をじゃらつかせながら、訝しげな眼差しを向けてくる。  星輝は隙をついてコンドームをむしり取った。ピンセットでつまんで汚物入れに放り込む手つきで、それを、たるみ気味の腹めがけて投げつけた。  べちゃり、と命中した拍子に中身がこぼれた。おぞましい光景に吐き気をもよおす。  あの、汚らしい液体が一滴でも可憐な蕾にかかっていれば、奈月は清らかな躰を蝕まれるどころか最悪の場合、生き腐れに至るコースをたどって──。

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