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第2話 兄弟ふたりの楽園を築く──夢……

 虫けらの分際で、と吊り目かげんの双眸に怒りをたぎらせて田中を射すくめる。それから皮肉たっぷりに言葉を継ぐ。 「おまえみたいな鬼畜が世の中にのさばっている。おれが身代わりを務めなきゃ、たいせつな弟はとっくの昔にキズモノだ」 「誤解があるみたいだが、デートしてくれと、奈月がしつこくせがむのにボランティアで応えてやったんだ。兄貴なら弟の監督くらいちゃんとしとけ。だいたい、どんな魂胆があってこっそり入れ替わった。強請(ゆすり)か……痛ぇー!」  ペニスを摑みざま、力一杯ひねった。あたかも雑巾を絞る要領で。 「おれたち兄弟は二十歳(はたち)の大学生。そちらは三十すぎの立派な社会人。道義的な責任を負う立場として、反省してもらわないとね」  もぎ取る勢いでペニスをねじ曲げた。手を引きはがしにかかるのをかわして、なおも引っぱる。  ぎゃあぎゃあと泣きわめくさまが痛快で、きりっとした口許がほころぶ。肌本来の色が、まだらに赤黒くなるまで締めつけたうえで、星輝は猫なで声で迫った。 「保険をかけて取り引き成立。条件は今後一切、奈月に近づかないこと」 「人手不足……だ。バイトが減るのは困、る」 「害虫に拒否する権利はない」  ペニスに加えてを摑んだ。ふたつまとめて、タマを無造作に揉みしだく。  ぴくぴくと痙攣しだしてから十、数えてからいくぶん力をゆるめた。へし折られかねない、という恐怖心を植えつけた甲斐があった。田中はもはや、ぎくしゃくとうなずくのみ。  星輝はローテーブルに顎をしゃくった。つまり田中のスマートフォンへ。 「今すぐ奈月にメッセージを送って。文面は〝きみは俺にはもったいない、さよなら〟。で、当然あいつのIDをブロックしてね」  ベッドから突き落とすが早いか、ローテーブルめざして這い進むさまを自分のスマートフォンで激写。  まぐわうところも隠し撮りしてある。保険の類いは二段構えに用意しておくこと──常識だ。  隠しカメラを回収して、さくさくとラブホテルを後にした。晩秋の夕暮れ時は街全体が黄金色(こがねいろ)に染まり、ミッションが成功したのを祝ってくれているようだ。  電車を乗り継ぎ、学生街に位置するアパートに帰り着いた。間取りは2DK。  兄弟、ふたり暮らしにはちょうどよい? いや、広すぎる。それぞれの部屋にベッドを据えてあるものの、どうせ夜な夜などちらかのベッドでくっついて眠る。 「ただいま」を告げる声に勝利感がひと雫にじむ。クズ男を成敗してきた、と洗いざらいぶちまけるわけにはいかないのが残念だ。

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