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『初日』ー1

   約束していたのに……必ず帰ってくると。  それなのに。  何故、あの方は……。   * * 初日 * *  ――深い木々の間に隠れて、その(やかた)はあった。  明治・大正時代に建てられた趣きのある、白い西洋風の館だった――。  敷地の外側にある駐車スペースに詩雨(しう)は車を停めた。 「おおーっ」と感歎の声を上げる。 「なかなか趣きのある洋館じゃん」 「ですね」  そうクールに答えたのは、モデルの『ハル』こと藤名遥人(ふじなはると)。 「わ、素敵〜」  黄色い声を出したのは、やはりモデルで今回の旅行メンバーの紅一点『RINA(リナ)』。  アイアンのフェンスの前を歩いて行くと白い門があり、表札には『五島』と書いてあった。 「門開いてるな。入ってもいいかな」  芝の綺麗な広い前庭。中央に噴水がある。  館の表玄関の前には、桜の大樹がシンボル・ツリーのように立っていた。 「あれ……」  詩雨が目を擦る。 「どうしたんです? 詩雨さん」 「いや……今、この桜の木、花が咲いているように見えた……」  それを聞いた遥人が慌てて彼の額に手を当てる。 「大丈夫ですか? 熱でも? 夏バテ?」 「あ、大丈夫。気の所為だから−−」  過保護な対応に照れ隠しでその手を払う。  ふと見ると、様子のおかしな人間がもう一人。 「どったの? 夏生(なつき)」  思えば先程からずっと考えごとをしている。 「や……子どもの頃一度来たことあってさ……こんなだったかな? って――ハルは来たことあったっけ?」  遥人と夏生は従兄弟同士だ。親戚筋の館に来ていてもおかしくはない。 「俺はないよ――俺んちは夏生んちと違ってごく一般家庭だからね」  全く興味なさげに答える。遥人の父親は確かに普通のサラリーマンだ。 「またそんなこと言って。――まあ、子どもの頃に一度来たくらいで、記憶も曖昧だしな」  大したことでもないかと、考えるのをやめた。 「ところで――夏生は何を持っているの?」  夏生が重そうに持っている箱を指差す。指しているのは、天下のハリウッド・スター様、カイト・ウェーバー。 「じいちゃんからの貢ぎ物――スイカだ」 「スイカ? 手土産にスイカって、いくら夏だからって」  ぶはっと詩雨が吹き出す。 「笑ってるけど、これ一個二万はする希少価値のあるスイカだから」 「げげっ」  詩雨、遥人、リナは、ははーっと箱に向かって拝む。天下のハリウッド・スター様にだけはどうやらぴんと来ないようだ。

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