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『初日』ー2
夏の盛りに、仕事を兼ねて避暑にやって来たのは、謎面子の五人。
新進気鋭の映画監督・鎌田 時宗 構想三年の、戦前〜戦後を舞台に描く悲恋物語『Engagement ――約束――』。
漸く始動した割には、まだ舞台の中心になる場所が決まっていない。イメージがどうのと細かいことを言って、何箇所もボツっている。
今回その鎌田氏の指令を受けてやって来たのが、ここというわけだ。
情報提供は、配給元のサクラ・メディア・ホールディングス社長だ。親戚筋と繋ぎを取って、条件に合いそうな別邸を紹介してくれたのだ。
鎌田氏は抜けられない仕事がある為、あとから合流することになっている。
今ここにいるメンバーは。
映画パンフレット、プロモーションビデオ等の写真・映像担当『SHIU 』こと柑奈 詩雨。サクラ・メディア・ホールディングス社長の孫で、桜宮 モデル・エージェンシー社長の桜宮夏生。映画に出演するエージェンシー所属モデル『ハル』と『RINA』。『RINA』は最近エージェンシーに移籍してきて、この映画の主演女優に抜擢された。
そして、主演男優はハリウッド・スター、カイト・ウェーバー。本名は『海人 』。ウィーンに住む詩雨の叔父の子ども――つまり、詩雨の従兄弟だ。髪色はダークブラウンで詩雨のそれとは違うが、瞳は同じブルー。いや、それも少し違う。ブルーに見えることがある詩雨の瞳は、本当はブルーグレイなのだ。顔立ちは流石に血のなせる技か、柑奈家のそれに似ている。
若いが人気も実力もあるカイトが何故、新進気鋭と言われても日本映画界ではまだひよっこ扱いの鎌田の映画の主演を引き受けたのか。それは、彼がカイトの父親の親友だからだ。
画面偏差値の異様に高い五名は、詩雨が所有する機材運搬用のワゴン車で、ここへ辿り着いたわけである。
白木の扉の前に、五人は横一列に並んだ。
「別邸って話だけど、今誰かいるのか?」
「僕らの他にも何人かお客さんが滞在するって聞いた。『五島 』さんがお客様好きで、よくこの別邸に招待して饗 してるって話だよ」
夏生が一歩前に出て、ノッカーを叩いた。
「だいぶ時代がかった感じだよな。まあこういうのをカマオ……じゃない、鎌田監督が望んでいるのかもな」
「ポイント一だね、詩雨ちゃん」
カイトがにこにこ笑った。
途端に陣形を崩し、遥人が詩雨を背に隠すように立つ。クールなイケメンをだいなしにして、ガルルッと牙を剥くような顔をしている。
「ハルくん、そんなおっかない顔しないでよ」
カイトは半ば呆れたように笑った。
(お前のことは信用できねぇ)
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