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第一章 1.

 あたらしく敷かれた石畳の通りは、朝から賑わっていた。  両脇に露店が並ぶこの目抜き通りは普段から人の往来が絶えないが、今日は一段と混んでいる。人々の目当ては通りの突き当りに構える大きな商館で、そこへ近付くにつれ徐々に人の流れも詰まっていった。 「おやジェレミー、アンタこんなところでなにしてんだい」  つま先立ちで通りの先を窺っていたひとりの青年が、その声に振り向く。  ジェレミーと呼ばれた青年は、露店の店先から声をかけてきた婦人に「やあ」と手を挙げて応えた。 「なにって、みんなと一緒さ。城の王子さまをひと目拝んでおきたくってね。アンナはもうお姿拝見したかい?」  毛先だけクセのある榛色の髪を揺らし、ジェレミーは人々の頭越しに通りの先へと目をやった。  声をかけてきた乾物屋の女主人アンナはそんなジェレミーの姿に目を丸くする。 「いや、アタシはまだだけど……アンタ、親父さんたちと一緒に行かなかったのかい?」 「弟が行ってるからね。俺の出番じゃないよ」  ジェレミーの返事にアンナは眉を下げ、難しい顔をした。  気を遣わせるのも悪いと、ジェレミーは「じゃ!」とにこやかに手を振って先へと進んだ。親しげにかけられる声はその後も続き、ジェレミーはそのひとつひとつに朗らかに返して歩く。  人波のなかにはジェレミーの姿を認めるや眉をひそめて目をそらす者もいた。そういった者たちが視界に入ってもジェレミーは気にしなかった。言いたいことがあるなら面と向かって言えばいいと思っていたし、また実際に言われたときは言い返してもいた。 『誰のおかげで街が豊かになったと思ってんの?』と。  自分が口にするには少々傲慢な言葉ではあったものの、誤りともいえない。その証拠にそう言われた者は誰もが口をつぐんだ。  この街がいまのようなにぎわいをみせているのはジェレミーのおかげともいってもよかった。厳密にいうならば大商人であるジェレミーの父親の尽力のためだが、同じことだ。父は息子を深く愛し、思いやっていた。  今日はその、ジェレミーの父親が建てた商館に王都から王子一行がやってきている。街の人たちが集まっているのも世継ぎである王子をひと目見ようとしてのことだった。

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