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 カシウス王子が去ったあとは人々も散開していった。人波にのってジェレミーとノーランももと来た道を戻ってゆく。 「なぁ、殿下は明後日まで滞在されるんだっけ?」 「あぁそうだ。今日はこれからウチで街の有力者たちとの謁見に臨まれて、明日は森のほうへ見回り、そのあと夜宴だ。宴にはおまえも顔を出すだろ?」 「出ないってば。むしろ宴だけ出ていくのも変だろ」 「いやでも、それはおまえ――」  気づかわしげな友人の言葉にジェレミーはいつものように屈託なく返す。 「いいんだって。大体、殿下になんて説明するんだよ。これはウチの長子ですがオメガのため家を継ぐことはできません、何卒ご慈悲を――って?」 「ジェレミー、」 「そんなのウチの親父が言うわけないし、言われたほうだって困るだろ」  男女の性別のほかにバース性のあるこの世界で、ジェレミーがオメガだと判明したのは十三歳のころだった。  バース性とは、α、β、Ωの三種類に分かれた性別のことで、個人差はあるもののおおむね十代の早いうちに判明する。もっとも数の多いのがβ、次にαとΩがおおよそ同数だと言われていた。  バース性が判明する以前と以降でほとんど変化のないベータの人々と異なり、アルファとオメガの性に生まれついた者は体質に変化がある。その変化の顕著なのがオメガで、彼らはオメガ性と判明するや多くの者たちが迫害の憂き目にあうのだった。  迫害の原因はオメガの体質によるところが大きい。オメガの者は男女問わず妊娠可能になるばかりか、発情期(ヒート)と呼ばれる体質変化が起こり、その間はほとんど人前には出られなくなる。これはアルファの人間を性的に惹きつける作用を持っているが、しばしばベータの人間をも惑わせた。  それゆえ、オメガ性の者は『ふしだらで怠惰な者たち』という決めつけがなされ、社会のなかで虐げられているのだった。

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