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「慈悲を、請うたのは……、おまえのほうだろう……!」 「ひぁっ!?」  胎の奥底まで震えさせるような低い声が耳元で響いて、ジェレミーは振り返った。  揺れる肩越し、視線を合わせたカシウスの瞳は澄んだプラム色から、熱情を映し出したかのような濃い柘榴色に変化していた。  どきりと心臓が音を立てる。  おそろしいほど一心に自分を責め立てる男の表情がこれまでと変化していることに、ジェレミーはそのときはじめて気付いた。  うつくしく整っているだけではない、すべてを攫って奪い尽くそうとするかのような、アルファの雄の顔――その男の欲望にあてられ、ジェレミーの身体も快楽の極みへと駆けのぼってゆく。 「ぅ、あ、あっ、……っく、イく、ひ、いぃあっ」 「出す、ぞ……出すぞ、ジェレミー……っ」  ひときわ強く腰を押し付けられ、一番奥で熱が弾けた。  同時に、執拗にこすられこねられて敏感になった内璧はびゅくびゅくと精を注がれる感触にも感じ入って、ジェレミーを絶頂まで押し上げる。 「あ、あ、はぁ……ぅ、」  じんと痺れる感覚に酔いしれるジェレミーの腰を、カシウスは放さなかった。  最後の一滴まで注ぎ込もうとするかのように、何度も押し付ける。そうしながらカシウスは、ぴくぴくとわななくジェレミーの肌にくちづけ、吸い付き、ぐるりと首を覆うチョーカーに歯を食い込ませていた。 「ジェレミー……ジェレミー、噛ませろ……噛ませてくれ……」  くりかえし囁かれるその声にジェレミーはうっとりと聞き入った。  アルファの男にそう請われるのは、気分がよかった。自分のなかのオメガ性がそうなるように誘い込み、身体をつなげて快感を得ることにジェレミーはためらわなかったし、優越感さえ覚えた。  けれどいまは、少しだけせつなさが勝っていた。  カシウスは幼子がするように鼻先をすり寄せてくる。その彼の頭をうしろ手に引き寄せ、あやすようにして何度も頬にくちづける。  この人の相手は自分じゃない――そう自身に言い聞かせながら。

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