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第1話

 魔王アイドクレースは、食事をしていた。  生まれ落ちた瞬間から、魔王として生きてきた彼には味覚が分からなかった。  それでも、いつの間にか周囲に集まり、自分を尊敬し敬う者達に味が分からないから食事はいらない。と、言うわけにもいかなかった。  生きていれば、腹は減る。  腹が減るならば、食べなければならない。  例えそれが、無味の物でも香りが分かるから良いか。と食事を続けていたら無味に慣れてしまったとしても。 「今日も良い食事だったと伝えておけ。」 「はっ。」  食べなければならない。  なんでも良いから、満たされる為に。 ***  この世界には、男女の性別とは他に、ケーキとフォークという分類の生物がいると習った。自分達ヒューマン、魔族、エルフ等。人型の生物にいるらしい。  ただ、細かいことは解明されてない上、個人差というのもあるとか。  共通されている事、分かっている事はフォークに味覚がない事。ケーキはフォークにとって極上の甘さを感じる事。  フォークはケーキの肉を食う事。  まさかそんな。と思っていたら、その時の先生は実際の裁判記録を配布して、それを見た俺達からは言葉が消えた。  色々隠されているとはいえ、法廷画家はよくガマンして描いたな。と今でも思う。  犯人は、恋人の首を食いちぎった。犯人は、妻の血を飲み干した。などなど。恐ろしい事この上なかった。 先生は言った。  『君達の中にも、ケーキかフォークがいるかもしれない。ケーキはフォークがいないと自覚出来ないが、フォークがいるのならば注意をしておこう。  ケーキを喰らう衝動を抑えろとは言わないが、殺すほど喰らうと当たり前だが捕まる。そしてこの国では殺しは即死刑である。自制をしなさい。出来ないというならば、抑制剤を必ず処方してもらいなさい。』  暫く学園内が疑心暗鬼に包まれた事は、仕方ない事だった。  女生徒は、当時流行り始めていた香水をやめ、舞踏会には必ずメイドを連れて行くようになった。  男子生徒は、当時流行り始めていた犯罪の真似をやめ、舞踏会には必ず騎士を連れて行くようになった。  どちらも1人行動を少なくする為だった。どちらも自制が効かなくなった時の、自分を捕らえるための要員だった。  そして俺は、ある日勇者だと告げられ、学園とは別に授業を受ける事になった。  その頃はまだ、俺がケーキだと自覚はなかった。

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