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第4話

時が経つのは早い物で、秀隆は大学4年になった。 もうすぐ卒業で就職先も決まっている。 幼少期の彼ソックリだった秀隆はそのまま成長し、今では亡くなる前の彼に瓜二つだ。 時々寝起きに見ると間違いそうになって焦る。 彩愛って優しい声で呼びながら髪を撫でられたらそのまま身を委ねそうになる位秀隆は彼に似ている。 声迄似ているのだから質が悪い。 彼に捕らわれたままの俺は誰とも結婚せず、43になった。 見習いだった花屋での仕事も今では一番の古株になっている。 秀隆は191cmの長身と美形で美声な為異常な位モテるが、何故か一度も彼女を作らない。 どうやらずっと好きな人が居るらしい。 そんなに一途に想っているのならサッサと告白すれば良いのにしない。 叶わない恋なのだそうだ。 まるで俺とアキちゃんみたいだ。 手が届きそうで届かないもどかしさ。 何度もキスして愛して貰ったのに、心は手に入らなかった。 漸く少しだけど好意が向けられ始めたのに、アッサリ事故でさようなら。 結局幼馴染み以上にはなれずに終わった。 だけど想いは色褪せずより深くなっていくばかり。 多分彼を愛する気持ちは一生消える事なく続くだろう。 幼少期はアヤちゃんと可愛く呼んでくれていたのに、小5位から彩愛と呼び捨てで呼ばれる様になった。 「彩愛。今日何が食べたい?」 柔らかな声色で夜ご飯を聞かれ 「お任せで」 口にすると 「了解」 秀隆はエプロンを腰に巻いてキッチンに向かった。 秀隆は恐ろしい位完璧だ。 外見も性格も頭も運動神経も良く、何でも出来る。 読者モデルをしているからかファッションセンスも良い。 こんな超人の想い人ってどんな人なんだろう。 多分凄く綺麗で可愛らしい人なんだろうな。 年下かな?それとも同じ年? 叶わないって言ってたからもしかしたら凄く年上なのかもしれない。 「秀隆の好きな人ってどんな子?」 「凄く綺麗で可愛らしくて守ってあげたくなる人だよ」 蕩ける様な甘い笑顔で答えられ胸が高鳴る。 ほんっと勿体無い。 俺が女なら絶対秀隆と結婚するのに。 って、年の差考えろ俺。 たとえ女でも43と22なんて有り得ない。 それに秀隆は彼の子供で今は養子とはいえ俺の息子だ。 今では彼と同じ位大切な存在になっている。 彼と出逢ってなかったら好きになっていたかもしれない。 って、しっかりしろ俺。 義理とはいえ息子に何邪な感情抱いてんだよ、変態か。 頭を切り替える為 「手伝うよ」 腕捲りをしてキッチンに向かった。 で、何故こうなった。 「…っ、ん、ぁ」 一緒に夜ご飯を作っていた筈なのに、今俺は秀隆のベッドの上で変な声を出している。 野菜を切っていた秀隆に近付き声を掛けると 「うわっ、近っ」 慌てて顔を逸らされ 「イッ!!」 その拍子に指先に傷が付いた。 慌てて血の滲んだ秀隆の指先を口に含むと 「………っ、彩愛」 熱を含んだ声で名前を呼ばれ、顔を上げると唇を塞がれていた。 慌てて距離を置き、傷の手当てをし何事も無かった様に振る舞ったのに 「ちょっ、秀隆?!」 俺は秀隆に姫抱きされて寝室に連行された。 「折角ずっと我慢してたのに、バカ」 小さく呟かれたと同時に押し倒された身体。 意味が分からないまま、気が付くと俺は全裸でベッドの上に居た。 慌てて逃げようとしたが 「逃げないで?」 泣きそうな声で言われ、拒めなくなった。 「ゃ、んぁ、ん。……っぅ」 「ぁ、ダメ。ちょっ、ダメだってば秀隆」 「ひぁあっ」 必死に止めさせようと説得するが、キツく言うと哀しそうな顔をされる為強く抵抗出来ない。 お陰で甘ったるい声ばかり出て、これじゃ全く説得力がない。 なし崩しなまま俺は秀隆に抱かれた。 ヤバイ。滅茶苦茶気持ち良かった。 俺親失格だぁ。 いい加減離れなさい。 キツく怒ろうとしたのに 「好きだよ彩愛」 脳をも溶かしそうな位甘く優しい声で愛を囁かれて全神経がフリーズした。 え、今なんて? 秀隆は今なんて言ったんだ? 「ずっと好きだったんだ。彩愛が父さんを好きなのも知ってる。父さん以外愛せないって事も」 嗚呼、やはり秀隆には誤魔化せないか。 ずっと一緒に居たんだ。 バレて当然だ。 だが、聞きづてならない。 何故秀隆の愛する人が俺なんだ? 凄く綺麗で可愛らしくて守ってあげたくなる人って、おかしくないか? 何処にも俺に当て嵌る要素が無いんだが。 う~ん。あばたもえくぼ、身内贔屓ってヤツか? それとも趣味が悪いとか? 不思議そうに考えていると 「深く考えなくて良いよ」 優しく頭を撫でながら 「これからは俺が彩愛を守るから。だから彩愛は俺だけを見てて?」 超絶男前な笑顔とイケボで囁かれて 「…………………っぅ」 全身が熱を持った。 この日から秀隆は俺に毎日愛を囁いて手を出してくる様になった。 「ちょっ、バカ。止めなさいって」 「ヤダ、止めない」 アキちゃん。貴方の息子は義父を襲う位大きく成長しました。 「やぁ、んぁ、バッ、もぉダメだって。ひぁあぁあぁぁっ」 こうして今日も俺は無駄な抵抗だと分かりながらも抗議の声を上げながら秀隆に抱かれる。 強く拒絶出来ないのは仕方ない。 大好きな彼と瓜二つな上に大切な宝物に愛されているのだから。 「ほら、手ぇ握って?」 伸ばされた手を握る。 指先を絡めると 「もう離さないから」 甘く微笑みながら秀隆は俺にキスをした。 この手の先にあるのは幸せか不幸せか、今は分からない。 だが、しょうがないなって思う位絆されている俺は、もう秀隆に恋をしているのかもしれない。

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