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第7話
これから…、どうなるのか。
通りすがる風景の中、見えた散歩道を並んで歩く、両親の姿を目に焼き付け、隣に座る男には見えないように、窓へ身体を寄せた。
「新しいピアスも用意してあるよ。
おい、もっとスピード出せ」
男から伸ばされた手が、ピアスホールの塞がった耳へ触れ、囁かれた言葉に震える身体を押さえ、運転手に指示を出す姿をみる。
あぁ、羨ましい。
この、どろどろ、骨すらも溶かそうとする声を囁かれることない。
ただ、低い声で男から指示を受け、送り届けたあとは、なにも素知らぬ顔で無事に家へ帰れるなんて…変わってほしいくらいだ。
やがて、見えてきた懐かしい景色に見慣れない扉を男とともに潜る。
靴を脱ぎ、通された部屋の椅子へ腰を落とす。
自分の心臓が大きく鼓動しているのに、全身は冷え汗が流れていく。
止まり続ける思考を無理やり動かし考え続ける。
どうすればいいんだ、、だ、れか…。
男が運命を鼻歌でなぞる音が部屋へ響く。
手際良く用意され、ゆっくり首元へ近づけられる、注射器の中には得体の知れない、小さく黒い何かが浮かんでいる。
「最近はさぁ、
犬や猫にマイクロチップを打ち込む義務があるんだって。
まぁ、そんなの、知ってるよねぇ」
冷たい針が剥き出しの肌へ刺さり、中身がゆっくりと押し出されていくのに耐えきれなかった。
頭を横切る両親の姿も、すべて男から全身に受けた仕打ちが頭を覆い尽くし消し飛ぶ。
男の手を払い、取り出した小型ナイフを振り下ろす。
だが、呆気なく取り押さえられ、引かれた絨毯の上へ倒れ込んだ身体の上に男がのしかかり、結局、最後まで注射されてしまった。
は、は、荒く浅く落ちていく息が、煩くてたまらない。
あぁ、…悪い夢なら、覚めてほしい。
もう一度、やり直せるのなら、必ず、あの日この男を殺してやる。
こじ開けられた口の中へ放り投げられた錠剤を吐きだすことすらできなかった。
ただ、唾液で溶けて跡形もなく消えていく。
男が拘束を解いても身体が、動かない。
指先だけが虚しく床をガリガリ引っ掻く。
男が持つ箱から取り出されたピアスが、耳の皮を
ぶちぶち、鈍い音とともに食い破り嵌められた。
せっかく、逃げ出せた、と。
「はやく、利口になれると良いねぇ…?
じゃあ、また来るからねぇ…。」
扉に手を掛け、ニタニタ笑う男を見上げることも、掴みかかることもできないまま、無情に閉められていく。
カチリと施錠音が響く。
流れていく涙が、柔らかい絨毯へシミを作り続けていく。
いつか、必ず、あの男を、地獄へおとしてやる。
どんな…屈辱にも、耐えて、
ー生き延びて、必ず殺してやる。
「さぁ、はやく頑張れ」
立ち去ったはずの男がしゃがみ込み、囁きかける声に誓う。
完
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