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第2話
唯斗との始まりは、俺が自分の彼女と間違 うて、唯斗に抱きついてしもたことからや。
一昨年のクリスマス前。その頃俺は付き合 うてた彼女と遠距離恋愛してた。
会社の同期との飲み会に、同じ部署の女子が、高校からの友達や言 うて連れて来たんが、彼女、北川由夏やった。由夏はモデルや。細くて背が高いってだけで、俺は特に気になれへんかった。その飲み会の時はあんまり喋れへんかったけど、同期の女子の並木から、由夏が二人で会いたいって云ってるって言われて、まぁ、それから付き合いが始まった。
付き合って半年くらい経った頃、由夏は東京に行ってモデルの仕事がしたいって言い出した。その時は、俺も現役やったし、反対する理由もないし、で、遠恋の始まりや。最初のうちは、由夏が大阪に来てデートしてた。
で、俺が一昨年の夏の合宿中に怪我で入院してもうて、そのあたりから何となく由夏との関係が微妙になってきた。
その数ヶ月後のクリスマスの前、由夏からどうしても東京に来てほしいって言われた。
俺は、由夏が来てほしいって言うた理由も何となく分かっとった。同期の並木から聞いた話しやと、ホンマかどうか分からんけど、由夏はモデルの仕事も思うようにはいかへんかったせいか、ホストクラブに入れ込んで、キャバ嬢しながら生活してて、いい仲になった客もおるとかおらんとか。
由夏は、俺とはもう何らかの区切りをつけたいんやろと思った。しゃあないわな。俺も怪我で現役引退の決意したりして、由夏の心配までしてやられへんかったしな。
で、あの日。
由夏との待ち合わせの時間が迫ってんのに、俺は道を間違うて、待ち合わせの場所も間違うて、そして人も間違うて…由夏を見つけた思ってホッとして後ろから抱きついた相手が、唯斗やった。ホンマに後ろ姿がそっくりやった。
振り向いた唯斗に、俺はマジでびっくりしたけど、早 よ由夏のとこに行かなあかんから、唯斗に、ごめん、言うて由夏のとこに行った。
由夏は、やっぱり俺とは無理や言うて、そこで別れることになったんや。フラれたってことやな。会って数分で終わってしもたわ。
俺は、この人混みから早よ抜け出したかった。その日は、俺がおった通りの街路樹のイルミネーションが点灯したばっかりで、とにかく凄い人やった。とりあえずその通りを外れたらええわと思って道を曲がってみた。その道の先に地下鉄への降り口があったし、それ目掛けて歩いて行ったら、路に面した喫茶店に、唯斗がおった。
その喫茶店の路に面した壁には大きなガラス窓があって、その窓際の席に、綺麗な顔した兄ちゃんが一人でなんやもの憂げに座ってんな、って見てたら俺は気付いてしもた。うす紫色のふわふわしたセーター着てるその兄ちゃんは、さっき間違うて抱きついてしもた兄ちゃんやって。男やのにうす紫色か、って一瞬のことやったけど覚えとったんや。
今考えたら、何でそんなことしたんかよう分からんけど、俺はその兄ちゃんと話してみたなった。
俺はガラス窓を叩いた。ほしたら俺のことを分かってくれたみたいで、図々しくも同席したわけや。
俺の登場に呆れながらびっくりしとったけど、俺は笑けてきた。こんなデカい街で数十分の間に二回も会うねんからな。互いに名前を言い合って、唯斗って可愛い名前がぴったりやなと思った。
それから、俺の彼女との話しや、唯斗がゲイで元彼との話しとかしていくうちに、えらい打ち解けてしもた。
それで…俺は、唯斗が気に入った。
好き、っていう言葉より、気に入ったっていう方があってると思う。まぁ、好きっちゃ好きなんやろうけど。
華奢で中性的な見た目、たまに人を小馬鹿にする喋り方、それでこっちが直球投げたら、恥ずかしそうにしよるとことか、全部が気に入ってしもた。ほんまに。
で、彼女にフラれたその日に、俺は唯斗とまた東京で会う約束をしてもうた。
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