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第6話 楓サイド・三上家訪問

婚約者の友則さんにお願いして、 三上家の夫婦の部屋を見せてもらうことになった。 「楓さん、いらっしゃい」 友則さんが優しく迎えてくれた。 私の専門医資格が取れるまで、2年も待ってくれた。 本当に感謝している。 「あらまあ、楓さん、いらっしゃい。お待ちしていましたよ」 三上母(内緒のネックネーム)もにこやかに迎えてくれた。 今日は三上父も待っていてくれた。 お店があるのに、良いのかな? 「ようこそ楓さん。よく来てくれたね」 三上父はやさしい。 素敵なティーセットで紅茶とケーキ、 そして私が持ってきた焼き菓子も出してくれた。 「あのね、今日は結婚の準備をどうしたらいいか相談したいんだって」 事前に友則さんに伝えておいた。 「はい、そうなんです。 父が“すべて相談してから決めなさい”と言うので、よろしくお願いします」 「じゃあ、部屋を見てから二人で相談して決めれば良いと思うわよ。 家財道具も食器も家電も全部あるから、 二人の部屋に必要な物だけ用意したら良いんじゃない? あとね、部屋の模様替えもしていいのよ。好きにして頂戴ね」 三上母が言ってくれた。 「ありがとうございます。 父が“嫁入り道具は現金を持たせるから、 相談してから買いなさい”と言ってくれたんです」 「へえ、そうなんだねえ。良いお父さんだねえ」 三上父が感心したように言った。 お茶をいただき、ケーキをご馳走になった。 そういえば、まだ友則さんの部屋を見たことがない。 「あのう、いつ引っ越して来ればいいでしょうか?」 「そうねえ、お仕事がお休みにならないと無理よね?」 「あ、いえ。結婚休暇をもらうので大丈夫です」 「そしたら友則、4月29日か30日か、1日あたりでどう?」 「うん、いつでもいいよ。 それに合わせて仕事を休むから」 「そう。じゃあ、お部屋に案内してあげたら?」 「うん。じゃあ楓さん、2階に行きましょう」 「はい」 三上家はとても大きい。 玄関からして広くて圧倒される。 2階へ続くクラシックな木製の階段は、 ゆるやかにカーブしていて、明治の洋館を思い出させた。 階段を上がるとき、友則さんが手を繋いでくれた。 うふふ……くすぐったい気分。 「ここだよ」 そう言ってドアを開けてくれた。 「え?」 「あのね、母が“きれいにした方が良い”って言うから、 壁紙とかカーテンとか新しくしたんだよ。 気に入ってもらえると良いんだけど」 「はい……わあ、すごく素敵!」 柔らかい白の壁に、薄いピンクの無地のカーテン。 シックで甘い雰囲気だった。 床と窓枠がこげ茶色の木製だから、本当に洋館のよう。 部屋の大きさは12畳あるらしい。 「ここね、リフォームして二部屋を一つにしたんだよ。 それとね、楓さんの書斎もあるよ」 奥のドアを開けると、4畳半ほどの洋室があった。 そこもきれいに整えられている。 「良いのかな?私の書斎まで用意していただいて。 だって友則さんの書斎は?」 「僕は仕事場にあるからいいんだよ。 家では仕事しないから、大丈夫」 「友則さんは今どこで寝てるの?」 「楓さんが来るまで、他の部屋で寝てるよ」 「あとね、クローゼットも中を空けてあるから、荷物を入れていいよ」 クローゼットを覗くと、4畳半くらいあって広い。 なんでも入りそう。 「そしたら、ベッドを買って良いのかな? あとは整理ダンスや鏡台を買えばいいの?」 部屋の中は、きれいに空っぽにされていた。 「あと机と椅子を持ってくればいいかなあ。 それとソファと椅子もあった方がいいよね? テレビと小さな冷蔵庫も置いていい?」 彼が、ふふふ、と笑っていた。 「うん。好きなようにしていいよ。 お金が足りなければ僕が出すよ」 「え?ダメダメ。それはダメなの。 父がいっぱいくれるらしいから、心配しないで。 それに私も少しは貯金があるから大丈夫」 「そしたら、注文したものを 4月28日の火曜日に届けてもらってもいいかな? それで29日が祝日だから、片付けに来たいんだけど、いい?」 「うん。良いよ。一緒に片付けよう。 業者さんには部屋に入れておいてもらうよ」 「ありがとうね」 「良いよ。楽しみでしょうがないよ」 そう言って、手を取って抱きしめてくれた。 はあ……ドキドキする。

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