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0-2:prologue
燕との交流はその日限りで終わらなかった。
燕は先輩を思うたび陽向にそのまま吐き出した。いつだって燕はまっすぐだった。陽向はそれをただ、静かに受け止めた。受け止めるたびに燕の叫びのような熱が陽向にじわじわ伝播する。熱いような、温かいような、苦いような熱が陽向の胸に広がった。
陽向も燕にまっすぐ伝えたくなった。まるで燕の熱に浮かされたがっているかのように、陽向は指を滑らせる。
『俺も愛したいし、愛されたい』
『恋愛について俺が言えることはありませんが、それでもソルさんを愛する人はたくさんいると思います』
『それは本当に俺なんでしょうか』
そう送るのに何度も何度もメッセージを打ち込んでは消した。最後は殆ど勢いで送ると、燕は丁寧に返してくれた。
『どういうことですか?』
『実は俺もよく優しいって言われます。でも俺の優しいは燕さんの先輩とは違って偽物なので、優しいって言われてもどこか信じられないんです』
陽向が心を決めてそう送ってから返信が届くまでに少し時間があいた。
やっぱりこんなこと送るべきではなかったかもしれない。そう思いながらも、指先は画面の上に留まったままだった。
やがて微睡み、殆ど夢の中に落ちかけた頃、燕からの返信が届く。
『すみません。こうして話していてソルさんは優しいとしか思っていなかったので、どこが偽物なのか、逆に信じられないです』
無機質なメッセージは誠実さに溢れていた。陽向は夢うつつに小さく笑った。スマートフォン越しに伝わる燕の心が温かかった。ふかふかの布団でなくても陽向を優しく包み込み、じんわりとした熱を届けてくれる。
うつらうつらとテキストボックスに文字を打ち込む。
『あなたの言葉なら信じられるかもしれません』のメッセージは、布団に包まった温もりとともに夢の中に消えていった。
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