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今日もベッドに並んで座り、俊我の他愛のない話に耳を傾けているとアラームが鳴り響いた。 お別れの合図。今日も"仕事"が全う出来なかった。 膝上に乗せていた手を強く握りしめた。 「時間になりましたので、見送らせていただきますね」 「ああ」 先に行く俊我の後をついて行くように愛賀も歩を進める。 俊我は身体目的で愛賀と接触しているわけではないと言ってきた時は他の欲を孕ませた人達とは違うと過度な緊張と虐げられることはなく、安堵のようなものを覚え、それは一種の感動にも似たものを感じていたが、しかしいつまでもこうしているわけにはいかない。 仕事をしないと店の主人になんて言われるか。俊我にその気がなくともその気にさせないと。 「また近いうちに来る」 「はい。⋯⋯俊我さん」 「なんだ⋯⋯───」 俊我の手を取った。 え、という顔をする彼にゆっくりと唇を近づけた。 緊張で高鳴る鼓動を聞きつつ、今にも触れそうな距離になった時、すっと離れた。 「一夜の夢をあなたと共に見られましたら」 口元に笑みを浮かべ、小首を傾げてみせる。 「⋯⋯あ、ああ。また来る」 虚を突かれた俊我のことを扉が閉まるまで見送った。 「⋯⋯⋯」 ふわふわと足元が危うい足場にいるような足取りで愛賀はベッドに突っ伏した。 さすがにお喋りだけはどうかと思い、意を決して思わせぶりなことをしてみせたが、その気が一切ない相手に一方的にそのような雰囲気に持っていかせようとすることが急に恥ずかしく感じた。 しかも、なに?! 『一夜の夢をあなたと共に見られましたら』って! 決まり文句であった言葉ではない言葉を試すように言ってみたが、やはりそれも無意味に終わってしまった。 思い出すだけでも恥ずかしい。 質の悪い布団を強く抱きしめるなりのたうち回った。

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