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9.※飲精
「お前が俺ではない奴の名前を呼んで、それに興奮したものだ。もっと口を開けてよく見せろ」
「は⋯ぁ⋯⋯」
苦味と拒絶で恐らく歪めた顔をしていると思われる。しかしそれを咎められることがなく、それに対してなのか、したり顔をする客にさらに口を開けた。
涙を流しながら。
俊我さん、ごめんなさい。名前を呼んでしまって悦んでしまってと深く後悔し、心の中で謝罪を繰り返していた。
パシャ。
一瞬、涙が引っ込んだ。
何の音かと思ったのも男が手にしていた物を見てすぐに分かってしまった。
「な⋯なん、で⋯⋯」
「お前とエッチした記念にだよ。それからお前の彼氏に見せろ。『他の男に簡単に股を開いて、ガンガン突かれて、アンアン喘ぐ淫乱なオメガです』と一言を添えてな」
そう言いながらも向けたままの携帯端末で何回もシャッターを切る。
俊我は愛賀が不特定多数の客と相手していることは分かっている。だが、誰かが性交しているところなんて見ることなんてない。
だからこんな姿を見せたら、俊我に嫌われてしまう。
「⋯俊我、さ⋯⋯っ、ごめ⋯なさ⋯⋯っ」
「いねぇ奴に謝ってねーで、口ん中のを飲み込んで、俺が言ったことを言えよ」
録画音らしきものがし、向けられる脅しにビクッと肩を震わせた。
言わないと。これを見せなければ大丈夫⋯⋯。
ゆっくりと喉を動かし、しゃっくり声を上げながらも口を開いた。
「⋯⋯僕は、他の男に簡単に⋯⋯股を開いて⋯っ、ガンガン突かれて⋯⋯っ、アンアン喘ぐ⋯⋯淫乱な、オメガです⋯⋯っ」
「まずまずといったところだな」
再度音がし、それを再生しているらしい今言った台詞が聞こえ、愛賀は顔を覆った。
俊我さん、ごめんなさい⋯⋯ごめんなさい⋯⋯。
「それ彼氏に見せろよ。さもないと彼氏の前でお前の淫乱な姿を見せつけるからな」
「⋯⋯ぇ⋯⋯」
思わず顔を上げると、客は部屋を去って行こうとしていたところだった。
しかし、引き止めることはなく一人となった愛賀は放り投げていた携帯端末に一瞥することなく、客に従うしかないのか、俊我への謝罪の言葉をうわ言のように涙を流しながら呟いていた。
「俊我さん⋯⋯ごめんなさい⋯⋯」
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