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第2話 すれ違っただけなのに

 俺は葉月とおる。某有名難関私大の2年。 平凡、中肉中背、貧乏、そして劣等生。 これ以上でも以下でもない。 ただし──オメガであることだけは、誰にも言えない秘密だ。 そもそも俺みたいな頭の悪い田舎者が、東京の超難関私大に入れたのは奇跡みたいな話で、実際、田舎の高校教師からは「現代の奇跡」とまで言われた。 でも実態は、東京に住むアルファの優等生のいとこが、試験前に“山を張って”一か月みっちり特訓してくれたおかげだ。 人生に一度くらい花道を歩いてみたかったんだよ。 いとこはT大出だし、そりゃ頼るだろ。 その代わり、貯めていた小遣いは全部むしり取られた。 それでも補欠から繰り上げ合格になった時は、親も俺も舞い上がった。 親は貯金を崩して学費を払ってくれている。 ……プレッシャーがすごい。 今はお坊ちゃんだらけのキャンパスで、疎外感にまみれた毎日だ。 入学時ビリで、今もビリをキープ。 なんとかビリでも2年に進級できた。 しかし卒業できる気がしない。 そんな俺には、もうひとつ秘密がある。 特別な感覚が強くて、前世がおばさんだったという記憶がある。 しかもその“おばさん”が超おせっかいで、時々部屋に出てきては喋り倒していく。 前世はゲイで、イケメン大好き。 「私は天使よ。でも女に生まれたのが一生の不覚!」と豪語していた。 いや、知らんがな。 とにかく出て来るな。 そして、さらにもう1つ秘密がある。 実は、憧れの先輩がいる。 同じ大学の3年だが、医学部だからキャンパスが違う。 文系の俺が大学で見かけることはまずない。 名前は一条海斗。 大病院の御曹司で、昨年の学内イケメンコンテスト優勝。 俺は後ろの方からガン見していた。 そもそもイケメン医者なんてこの世にはいない。 ネットで探したけど、全員アウト。 あれは小説の中だけの存在だ。 なのに医学部のあいつは、この世の奇跡。 ファンタジーそのものだよ。 俺が医者にこだわる理由? 半端に生き残りたくないからだよ。 その前に見つけてほしいから、相方は医者じゃないと無理。 コロっと逝くならいいけど──って、おばさんも同じこと言ってたな。 不思議なことに、彼とは渋谷でよくすれ違う。 なんでだ? 俺は曜日・時間・場所をすぐメモした。 そして今日も、合間を見て“来そうな時間と場所”で張っていた。 ああ~キター!! あいつだ。 俺はただ、なにげに顔を見て、すれ違うだけでいいんだよ。 それだけで一日が輝くんだ。 あと2m、1m── その瞬間、後ろからドンと押されて、俺は海斗にぶつかった。 「うわっ、すみません!!」 とっさに謝ったが、顔を見て絶句。 向こうも絶句。 「えっ? あれ? なんで?……もしかして俺がそっちにいる?」 「お前こそ、なんで俺なんだよ? どういうこと? 夢か?」 ええーー? 二人でお互いを見て呆然とした。

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