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番外編9・流星のごとく

 それから三日が経った。 なんとか術後の強烈な痛みが少しずつ和らいできた。 痛くて泣いていると海斗が覗きに来て、 そっと腰をさすってくれた。 「とおる、つらいか?お腹を切っただけじゃなくて、 産後は子宮が収縮して縮むから余計に痛むんだよ。 ごめんな。とおるだけこんな思いをさせてさ......」と海斗。 なんだか殊勝なことを言っていた。 「反省しなくていいから、痛みを止めてよ。 それだけでいいから」 言葉なんかなんの慰めにもならない。 「だからそれが出来ないんだって。 今の飲み薬の痛み止めしか出せないよ。 あまりに痛み止めを使うと、 腸がマヒして動かなくなるんだよ。 それも嫌だろう?」と海斗。 「ううん、俺はそれでもいいよ。 でもどっちにしろ、もう二度と子供は産まないからね」 涙ぐんだまま宣言した。 この痛みが海斗にはどれだけ分かるんだよ......。 「はい、分かりました。ごめんなさい」 しおらしく謝ったそばから、ガラッと調子を変えた。 「あのさあ~、すっごくいい話を聞きたくないか?」 途端にニヤッとして、もったいぶっていた。 「なんだよ.....」 「あのさ。息子ちゃんがアルファだってわかったんだよ! すごいだろう?」 「え?もうわかったの?」 「うん、時代は進んでるんだよ。 これでうちの跡継ぎになるのは間違いないよ。 とおる、本当に有難うなあ。お陰でうちの病院は安泰だよ」 「そんな先の事なんて分かんないよ。 それより名前はどうするの?」 「俺が考えたのがある」 「ふ~ん。なに?」 「流星(りゅうせい)にする」 「そうなんだ......」 「気に入らないか?」 「ううん、海斗が決めたならそれでいいよ」 一条流星か......。 一条海斗の息子が流星なんだ。 ちょっと笑った。 なんかロマンティック過ぎない? でも、痛みがやや和らいだ。 その後は、日々少しずつ痛みが楽になっていった。 退院は二週間後だった。 その後は自宅でしばらく療養する。 退院後は母がパートを休んで、二週間ほど面倒を見に来てくれた。 週末は父と妹の香菜も覗きに来た。 海斗が、 「開腹手術したから2か月以上は無理をしないで、 ゆっくり過ごすように」って言ってくれた。 だから母が帰ったら、ミニメイドサービスを半年間契約してくれた。 これが一番助かった。 夜中のミルクを与えるのが一番大変だった。 身体がちゃんと回復していないのに、いつも睡眠不足だった。 だから”お父さんは帰って来ないもんねえ”って、 流星に話しかけていた。 やっぱり、海斗の血が半分交じっているせいか、 顔立ちがえらく整っているんだよな。 先が心配だよ。絶対モテモテになるに決まっている。 ところで、どこで聞いたのか知らないけど、 大学時代の同級生の友子から珍しくメールが届いた。 「葉月君、一条海斗さんの子供を産んだんだって?おめでとう。 葉月君が海斗先輩と結婚したのは、 私の人生で一番の大ショックだったわ。 今更だけど、これ全女子大生を代表して言うわ。 みんな相当がっくりしていたよ。でもお見事だわ。 誰にも気付かれなかったもんね。それはすごいよ。 海斗先輩も医師になられたそうで、それも凄いよね。 葉月君もこれから子育てで、大変だね。 ちなみに私はまだ良い人に恵まれてないわ。 誰か良い人がいたら教えて頂戴な。 お医者さんは大歓迎よ。 ではまたね。どうぞお幸せに。友子」 なんだかちょっと微笑んだ。 今頃こんなメールが来るなんてね。 友子も彼女なりに好意を持っていてくれたんだなって思った。 まあ、あの頃の俺は海斗一筋だったもんね。 海斗も俺のことをずっと想っていてくれたと思う。 今となっては懐かしいね。 これからは間違っても二人目を作ろうとする海斗に、 丸め込まれないように気を付ける。 それにしても、男のオメガっておっぱいが出ないんだね。 まあ、それでよかったんだけどさ。 これからは海斗の子供、流星をかわいがっていくよ。 イケメン好きの俺だから、先が楽しみ~♬ ー*-*- 筆者より 以上で今回の番外編を終わります。 お読みくださいまして、本当にありがとうございました。 しかし‥‥‥多分完結詐欺になると思う。 では、またお会いしましょう。 スピカナ

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