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第1話 廃部になりそうです、演劇部
「ねぇ咲夜?演劇部って具体的にどんな活動するんだろうね?」
ここは清峰《せいほう》学園内の演劇部の部室内。
在籍するのは一条悠真――演劇部部長で透けるような金髪にグレーの瞳を持つ、学園内でも人気の高い人物である。
「そりゃあ……台本を作って、配役決めて、衣装や小道具を作って、練習して、発表するんじゃない?」
いきなり何を言い出すのだろうか。
そんな戸惑いの色を混ぜながら答えたのは、白石咲夜――悠真と同じ演劇部の部員である。
「まぁそうだよね」
「そうだよねって……じゃあなんで聞いたのさ」
「これから演劇部として実際に活動するにあたって共通の認識って大切だと思うんだよね。観劇して感受性を磨くのが活動って言う場合だってある」
「実際に?」
咲夜は"実際に活動する"という言葉に引っかかりを覚えた。確かに演劇部は部員が自分と悠真しかいないし、これといって部活らしい活動をしたことも今までほとんどない。だからといって何も咎められる事もなかったし、今だって狭い部室に顔を出して何気ない放課後を過ごしている。
そんなゆるくて穏やかな時間が好きなのに――
「祐季先生から言われたんだよね、部として何か活動したないと廃部になるって」
「なっ!?」
嫌な予感が的中した。咲夜は廃部という言葉に狼狽える。心地よく思っているこの空間が奪われてしまうかもしれない。そんな危機感とは正反対に悠真は穏やかだ。廃部が何を意味するのか本当に分かっているのだろうか――
「僕としては廃部にはなってほしくないから、今度の学園祭で何か演劇をやろうかと思っているんだけど、咲夜はどうしたい?」
「そりゃあ俺だって廃部やだ!絶対反対!」
「なら、決まりだね」
「でも演劇をやるって言ったってそもそも何から手をつければいいんだか……」
「それなんだけど、咲夜は人を集めて来て欲しいんだ。助っ人だね。男子生徒を2人」
「2人?そんなんで足りるの?」
「大丈夫。あ、でもできたらこの2人がいいかな」
悠真は机の上に無造作に置かれていた学内新聞の切り抜きを、ふと思い出したように手に取る。それは少し前に新聞部が掲載したもので、そこには"学内で人気のある生徒"としてランキングが掲載されていた。要は異性からの投票によるモテ男ランキングである。悠真はそのランキングの2位と3位の人物を指さした。(言うまでもなく1位は悠真である)
「この2人……知り合いでもなんでもないんですケド」
「廃部だよ?」
「うっ」
穏やかな微笑みに逆らえないような圧力を咲夜は感じとる。これはなにがなんでも2人をスカウトしないといけないと察した。
渋々部室を後にする咲夜を見送る悠真。賑やかさが減った空間で頬杖をついた。やけに広くみえてしまうのは気のせいだろう。もう少し無理難題をふっかけられて駄々をこねられるかと構えていたが、物足りなさを感じるのは割とあっさりと部室の扉が開かれたからだろう。
「さて、僕も頑張らないとね」
今まで適当に書いてきた部活動記録がついに捏造だとバレた。顧問である門井祐季もさすがにこれは庇いきれないと判断し、廃部の可能性を悠真に伝えたのだった。すぐにバレずに半年以上何もしないで過ごせたのは運が良かったほうなのかもしれない。
ただ普通に演劇を行うだけでは足りない。悠真はそう判断した。学園祭で1番盛況だったと言わせるレベルでないと今までの捏造を流すことは難しいであろう。だからといって自分や咲夜に観客を惹きつける事ができる演技力があるわけでもない。そうであるなら出来ることはおのずと限られている。
「学内で人気のある生徒が揃って演技をする。話題性も充分だし――何よりインパクトがある」
ふと、鏡を見た。
淡い金髪が窓から差し込む光に当たって輝いているように見える。見た目で損をしたことがなく、得だとも思ってなかった悠真だが、今回ばかりは己の見た目の良さに少しだけ感謝した。
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