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第2話 前途多難です、スカウティング
咲夜は一人、部室がある建物から本校舎に向かって歩いている。
だがその足取りは非常に重い。いくら悠真の頼み――部活動存続の危機だからといって、ほとんど面識もない人間をどうやってスカウトしろというのだろう。
窓の外では男子生徒が勢いよく宙を飛び、下にいる女子生徒に向かって何かを叫んでいた。女子生徒が勢いよく右腕を前に出し人差し指をクイと曲げると、男子生徒が持っていた書籍だけがまるで引き寄せられるように女子生徒の腕に納まった。
人間が飛んで、本が引き寄せられる。それは咲夜にとって感情が動くような光景ではなかった。特に気に留めることのない日常。
この学園生活において、咲夜の感情が動くことを挙げるのならば――。
「俺の力って未だになんなのか分からないんだよな……」
目に見えないものを赤の他人にあると言われて、はいそうですかと信じるのもまた難しい。
誰もいない廊下のせいか、誰にも打ち明けられない不安に飲み込まれそうな気がした。
そんな不安を知ってか知らずか悠真が能力について聞いてきたことはなかった。咲夜にとって、あの部室で悠真と過ごす何気ない時間を失うことは避けたい事態なのは間違いない。
握っていた切り抜きに目を向ける。
「能力に関しては知らないけど、華のある人に声かけるのって本当憂鬱……」
今日は諦めて一度部室に戻って作戦を考えよう。体の向きを180度回転させるが、咲夜の足は前に進まなかった。
――そっか。咲夜は演劇部が廃部になってもいいんだ。
少し眉を下げながら笑う悠真の声が脳内再生される。すぐに戻ってきたことに対して笑われるような気もするが。
スカウトよろしくね。と言わんばかりの悠真に負けて部室を出た時から詰んでいたのだ。
「こうなったら腹をくくるしかないか」
弱音や愚痴を延々と唱えていても事態は何も解決しない。そう自分に言い聞かせて咲夜は前を向いた。
そうして再び踵を返したその時だった。
「った……」
「あぁごめんごめん。大丈夫?大丈夫なら俺ちょっと急いでるから行きたいんだけどいい?」
思い切りぶつかった鼻を咲夜は押さえる。前向きに頑張ろうとした瞬間に出鼻を挫かれるなんて運が悪い。
ぶつかった相手は少し長い前髪をかき分けながらグッと顔を寄せる。聞いてる?と言わんばかりだ。サングラスの端から垣間見える瞳。顔を近づけるなよ――眉をひそめた咲夜は少し間を置いて目を逸らした。
「(へぇ……?)」
少し口角を上げて逸らされた目を追いかける。掛けていたサングラスを少しだけ外すと綺麗な薄い琥珀に咲夜は息をのんだ。
薄い琥珀色。
取り込まれそうな感覚。
呼吸が浅くなる。
そして直感する――。
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