1 / 3
第1話
神聖な境内に真新しい牡丹雪が降り積もる。
ふわふわと、だけどしっかりと世界をグレースケールへと変えていく。
小さくたって威力があるのが雪のこわいところだ。
だけど、嫌いじゃないと思えるようになった。
最近は二季に近いが四季の美しさを理解出来る歳になったのか。
いつもは静かな小さな神社も今日ばかりは違う。
大きな声ではしゃぐ若者。
アルコールのにおいを纏わせる年配者。
様々な人たちが列をなしている。
「10秒前!」
何処からか聞こえてくる声にスマホを見ると、時刻は23時59分。
「9!」
五月蝿いな、と思いそうな声量でもなぜか許せるのは今日の日付けが12月31日だからだろうか。
「8!」
真冬には、マンションの前で滑ってケツを打った。
あれは暫くの間、痛かった。
「7!」
春には、桜の下で缶ビールを傾けた安っぽい花見をした。
「6!」
今年の夏も馬鹿みたいに暑くて、汗だくで花火を見た。
「5!」
折角買った秋服を着たくて紅葉狩りに出掛けたけど、結局着れたのはその1回だけだった。
悔しいから来年こそはリベンジする。
「4!」
さっき食ったスーパーのパック寿司も美味かった。
「3!」
また来年もそんな年であってほしい。
「2!」
そう…
「1!」
願わくば…
「あけましておめでとう!」
ドンッ、と境内から太鼓が轟き響くと彼方此方から挨拶の声があがる。
空気がかわることもない。
なにが特別になるわけではない。
ただの、日付けの変更だ。
だけど、
俺は隣をしっかり見て、頭を下げた。
「おめでとう。
今年もよろしくな」
「あけましておめでとう。
此方こそ、よろしくお願いします」
この笑顔と共に過ごしたい。
節目には丁寧な挨拶を返してくる、こういうところもらしくて好きだ。
握り締めた拳を差し出すと、ゴチッと同じ物がぶつかった。
ともだちにシェアしよう!

