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魔法
「あなたが碧翠堂さん!」
少年は声をあげた。
「それで、この猫は翠の目なんだ?」
少年は、そう言って猫を撫でた。
「僕は、ここの待夜駅の主の待夜駅です」
主人は、ずいぶん若かった。
階段を降りると、奈落の底は、別世界だった。
翠の宝石、碧の指輪。待夜の手からマジックのようにカクテルが生まれた。
碧翠堂は、待夜駅の魔法を見たいばかりに次々と注文をした。
碧翠堂は、カウンターに頭をついた。重力を持った額が重く、グラスの脚のまわりがお漏らしのように、皺の寄った白いペーパーナプキンがお襁褓のように、濡れていた。
重なった氷がカラリと音をたて、グラスの中でくるりと向きを変えた。
ミシミシッと、氷に液体のしみいる音がする。碧翠堂は眠りこんだ。
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