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第2話 人生のどん底

記憶にないくらい幼い頃、僕は道端に突っ立っているところを保護された。 両親が名乗り出ることもなくそのまま養護施設で育った僕は、傍から見れば可哀想な子どもだったと思う。 しかし僕は二十三歳になるまで、それなりに幸せに生きていた。 高校を卒業してすぐ、付き合いだしたばかりの彼女の妊娠が発覚して。 通っていた専門学校を中退して、妻の親の会社で働かせて貰いながら妻子を養うことになった。 コネ入社だと陰口を叩かれたけど実際にその通りだったし、贅沢はできない生活だけど娘はめちゃくちゃ可愛かったし、本当に毎日が幸せだった。 妻は高校時代に僕より一学年上の、憧れの先輩だった。 学校で一番綺麗な高嶺の花で、たまたまバイト先が一緒だった先輩からベッドに誘われた時は、夢なんじゃないかと思ったほどだ。 一度の行為で娘が出来たものの、結婚してから五年経ってもなかなか次の子どもには恵まれなくて、そんな時に妻の浮気が発覚した。 しかし妻は、問い詰めた僕に彼とは浮気ではないと言った。 むしろ僕のほうが、浮気だったのだと。 そして娘はその「本気な相手」の子どもであるから、離婚して欲しいと。 遺伝子検査をした結果、妻の言っていることは事実だった。 娘だと思っていた子どもは、僕の子どもではなかったのだ。 さらに詳しく調べたところ、僕は無精子症だということまでわかった。 結局僕たち夫婦は離婚し、妻には優秀な弁護士がついて、娘の親権は妻にとられた。 妻の親の会社にそのまま勤め続けるわけにもいかず僕は職を失い、妻の親名義の自宅からも当然のように追い出された。 女性不信になって、勃起不全になって、人生どん底に陥って。 それでも、死ぬつもりはなかった。 ただ自分の人生を見つめ直すため、考え直すために、山登りに行ったのだ。 まさかそこで崖から落っこちて、本当の意味で、全く違った人生を歩むことになるとは思わずに。

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