2 / 2
第2話 人生のどん底
記憶にないくらい幼い頃、僕は道端に突っ立っているところを保護された。
両親が名乗り出ることもなくそのまま養護施設で育った僕は、傍から見れば可哀想な子どもだったと思う。
しかし僕は二十三歳になるまで、それなりに幸せに生きていた。
高校を卒業してすぐ、付き合いだしたばかりの彼女の妊娠が発覚して。
通っていた専門学校を中退して、妻の親の会社で働かせて貰いながら妻子を養うことになった。
コネ入社だと陰口を叩かれたけど実際にその通りだったし、贅沢はできない生活だけど娘はめちゃくちゃ可愛かったし、本当に毎日が幸せだった。
妻は高校時代に僕より一学年上の、憧れの先輩だった。
学校で一番綺麗な高嶺の花で、たまたまバイト先が一緒だった先輩からベッドに誘われた時は、夢なんじゃないかと思ったほどだ。
一度の行為で娘が出来たものの、結婚してから五年経ってもなかなか次の子どもには恵まれなくて、そんな時に妻の浮気が発覚した。
しかし妻は、問い詰めた僕に彼とは浮気ではないと言った。
むしろ僕のほうが、浮気だったのだと。
そして娘はその「本気な相手」の子どもであるから、離婚して欲しいと。
遺伝子検査をした結果、妻の言っていることは事実だった。
娘だと思っていた子どもは、僕の子どもではなかったのだ。
さらに詳しく調べたところ、僕は無精子症だということまでわかった。
結局僕たち夫婦は離婚し、妻には優秀な弁護士がついて、娘の親権は妻にとられた。
妻の親の会社にそのまま勤め続けるわけにもいかず僕は職を失い、妻の親名義の自宅からも当然のように追い出された。
女性不信になって、勃起不全になって、人生どん底に陥って。
それでも、死ぬつもりはなかった。
ただ自分の人生を見つめ直すため、考え直すために、山登りに行ったのだ。
まさかそこで崖から落っこちて、本当の意味で、全く違った人生を歩むことになるとは思わずに。
ともだちにシェアしよう!

