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第14話 異世界帰りのΩ 【終】

「私が欲しいのはイヅルだけだよ」 真っすぐに言われて、胸に喜びが満ちていく。 それなのに、僕の口からは真逆の可愛くない言葉が飛び出した。 「でも貴族なら、いつかは後継者が必要になると思いますし」 この世界に飛ばされて以来、本当にエルダーさんには世話になりっぱなしだ。 だから少しでもエルダーさんのお役に立てるなら、それだけでいいと思った。 でも僕はΩじゃなくて、男だ。 エルダーさんの子どもを産めるわけではない。 「私は最初から、イヅルが子を孕めなくても問題ないと話したはずだよ」 「それは、そうです……が」 「うーん、困ったな。私がどれだけイヅルを好きか、きちんと理解してもらうまで頑張るしかないかな」 エルダーさんはその日も、僕を抱き潰した。 ――それから僕に話し掛けてきた男の人とは二度と会うこともなく、エルダーさんが僕以外の人と結婚することもないまま、一年後。 僕は体調不良に見舞われ、ベッド生活を余儀なくさせられていた。 下腹部の不快感と、気持ち悪さが止まらない。 「おめでとうございます、ご懐妊です」 医師の言葉に、耳を疑う。 ……なぜ男の僕が、妊娠!? いやいや、あり得ない。 呆然とする僕の横で、嬉しそうに微笑むエルダーさん。 「イヅルは自分が異世界人だと言っていたが、そちらの世界では孤児だったと言っていたよね?」 「はい、まあ、そうですが……」 「イヅルは恐らく、この世界の人間なんじゃないかな。何かしらの理由があって幼い頃に異世界へ飛び、再びこの世界へ戻って来たのだと思う。運命の番である、私の元にね」 「ええ……っ!?」 それは突拍子もない話だったが、そう考えれば辻褄は合った。 ということは、僕を捨てたのだとばかり思っていた両親は、この世界にいるのだろうか。 「もしかしてエルダーさんは、予想していたんですか?」 「うん。私はイヅルがΩだとわかっていたけど、その時に話してもイヅルは信じなかっただろうし……最初から教える気はなかったよ」 「え? なぜですか?」 「だって、もしイヅルがこの世界の本当の家族に保護されれば、イヅルが私と結婚をするメリットがなくなってしまうからね」 大事にして、甘やかして、孕ませて。 イヅルがこの世界の人間であると気付いた時に、本当の家族を探してあげようと思ったんだ。 黒髪黒眼という色彩の人種がいる地方は限られているから、そこまで難しいことではないと思うよ。 ただしそれは、イヅルが離れていかないよう、私の好意で雁字搦めにしたあとのことだ。 にっこりと笑ったまま、エルダーさんは腹黒い胸の内を語ってくれた。 それを聞いて、怖いよりも嬉しいと思う僕は……とっくにエルダーさんに、囚われているのだと思うのだった。

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