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前編①

「いらっしゃいませ! 今日も新鮮な食材が入ってますよ」  俺の意思とは関係なく口が動き、体が勝手に身振り手振りをする。カウンターを挟んで正面に立っている客が空中を指す動作をすると、俺の目の前に『プレイヤーが買い物を終了しました』という表示が現れた。 「ありがとうございました! また来てくださいね!」  去って行く客を見送りながらまた俺の口は勝手にそう言い、体はお辞儀をする。  勝手に動く体に俺は違和感や不快感を覚えることはない。  当然だ。俺は今、VRMMORPGでNPCとしてプレイしているのだから。   *  おすすめのフルダイブ型ゲームと検索すればどの記事にも大体載っているような人気作品、それが今俺がログインしているゲームだ。  普通に冒険者としてメインクエストを進めるだけでも十分楽しめるフルダイブ型のファンタジー系VRMMORPGなのだが、他プレイヤーやNPCとセックスしたりエロイベントを起こしたりできる――いわゆる成人向けゲームのため人気度はどんどん上がっていった。ほかにも職人になって店で働いたり、自分で店を構えたりと、ゲーム世界の住人のようなプレイができる自由度の高さも人気の理由の1つだ。  俺の周りにもずっとプレイし続けている友達が何人かいるが、俺自身は何年か前に少しだけ、しかもエロいことは一切せず少しだけメインクエストを進めただけですぐにやめてしまった。    そんな俺が数年ぶりにこのゲームにログインしている理由は、とある新要素が増えたから。いくつかサーバーを増やすのに合わせ追加された、このサーバーにしかないシステム――それが俺が今やっている『NPC姦プレイ』だ。  プレイヤーが住人のように振る舞うプレイとは違い、あらかじめゲーム内に設定されているNPCに入るのがこのシステムの特徴だ。ログイン時にゲーム内にすでに作られているキャラクターから1人選択しそのキャラに入り、設定された行動を取り決められた台詞を話す。ログアウトまでに他プレイヤーにエロイベントを起こしてもらわなければただのNPC体験で終わったりする。  実際、ゲームを再開してから何度かNPCの中に入るプレイヤー――通称NPC姦プレイヤーとしてログインしているが、俺はまだ1回もNPC姦プレイを経験したことがない。  サーバー人口は結構いるのだが、必ずしも自分が入っているNPCのところに攻めプレイヤーと呼ばれる、NPCに対してエロイベントを起こすプレイヤーが来てくれるとは限らないのだ。  NPCの数がそもそも多いうえに、NPC姦プレイができるサーバーといっても1つの要素でしかないからNPCに興味のない人も当然いる。もちろんNPC姦をしたい人も好みのキャラタイプがあるし、中に人が入っていないNPCを選んでエロイベントを起こしている人もいるから自分にエロイベントが起きるかは運次第といった感じなのだ。  端から見れば何が面白いのと言われそうなシステムだが、俺はログインするたびワクワクドキドキしている。  元々アナニー好きでケツにちんぽを挿れられたいと思っていたのだが、どこにでもいる平凡な見た目なうえリアルでもゲームでも社交的なタイプじゃないし、娼館でNPCに抱いてもらうのもなんか違うなと思ってやらなかった。  だがこのNPC姦プレイは社交的とかどうとか関係なく抱いてもらえるうえに、現実じゃできないプレイができるのだ。擬似体験だとしても俺にはこのうえなく魅力的なシステムだった。  NPC姦プレイ中は自分の名前がどこにも表示されないのもいい。オプションでNPCに人が入っているかどうかは判別できるが、あくまでアイコンが表示されるだけなので名前までは出ないので安心して攻めプレイヤーのちんぽを待つことができるのだ。

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