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番外編③ 新しい日常はすぐそこに(攻め視点)⑨

 後処理を終え、僕とやなぎはベッドに入り抱き合う。男2人で寝るには狭いベッドの上で、先に眠りについた彼の髪を優しく指で梳く。現実でもゲーム内でも、こうして腕の中で眠る彼を抱きしめるたびに、彼を探し続けてよかったと感じる。 (生まれて初めて興奮した声の相手が男だなんて、想像もしてなかったなぁ……)  僕はずっと、他人の喘ぎ声が苦手だった。別れた理由は様々だけど嬌声を聞きたくなくて僕がセックスを避けてきたのも一因となり、これまで付き合ったどの彼女とも長続きすることはなくて。長続きしない理由を聞いてきた友人に悩みを打ち明けたら、紹介されたのがあのVRMMORPG。  現実での欲は満たされないかもしれないけど、NPCを相手にすれば後腐れがないからと。気に入らなければボイスをオフにすることもできると教えられ、気休め程度にはいいかと始めたあの日。 (ほかのNPCと話してる声がなんとなく気になって触れてみたら……男なのにあんなにやらしい声で鳴いて、えっろいマンコしてるなんてさー……♡)  これまでの人生で男を恋愛や性の対象として見たことなんてなかったし、濁音混じりの声なんて汚くて一番嫌いな喘ぎ声だった……はずなのに。初めて途中で萎えることなく欲望のまま絶頂を迎えたときの感動は、今でも忘れられない。しかもそれが設定された音声じゃなくて、中にいたNPC姦プレイヤーの声だと知ったときは歓喜で震えたほどだ。 (あの声をもう一度聞きたくて探して……今はもう声だけじゃなく、やなぎのすべてが僕を興奮させてきて、夢中にさせるんだ……)  探し続けて、見つけて。身体から堕として、心も手に入れた。引っ越しが終わればやなぎの生活の中に僕という存在が溶け込んでいくだろう。その次は――なくてはならない、いないと耐えられないという段階まで持っていきたい。  僕はもうやなぎのいない人生なんて考えられないから、彼にもそうなってもらわないと。 「愛してるよ、やなぎ……♡」 「……ん……へへ……♡」  僕の言葉に、やなぎがにへらと笑う。きっと夢の中で聞いたのだろう。僕も早く夢で会いに行かなくちゃ。ゲームでも現実でも、そして夢でも一緒にいたい。  そっとやなぎの身体を抱き込んで、目を閉じる。彼の寝息を聞いていると、次第に僕の意識も薄れていく。 (明日は起きたらやなぎを見送って……またいろいろ作り置きをしてから出かけようっと……)  やなぎの家に泊まったときはいつも、数日分の料理を作り冷凍庫に入れている。純粋に喜んでくれるし、ご飯を食べるたびに僕を思い出してくれるから。  一緒に暮らし始めたら毎日とはいかなくてもたくさん僕の手料理を食べさせて、やなぎの身体の中も僕の愛でいっぱいにしたい。 (あー……早く引っ越しの日にならないかなあ……)  毎晩やなぎを抱きしめながら眠り、朝は一緒に起床する。在宅勤務が多めの僕が彼の帰りを待っておかえりと言い、一緒に夕飯を取って。毎日とはいかなくてもいっぱいえっちして、ゲーム内でもいろんなプレイをしたい。休みの日はデートもして、たくさん愛を囁こう。  遠くない未来に思いを馳せながら、僕は夢の中へと落ちていった。 (了)

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