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番外編⑤ モンスター化の呪い①
俺とシュンは今日、とあるダンジョンに来ていた。
目的は職業に関連するクエストをクリアするための素材収集だ。俺はモンスターのドロップ品で、シュンは錬金術の素材。
連携して敵を倒したり素材採取をしたりして、目的は無事達成。だけど俺たちはすぐに帰らずに、ダンジョン内を2人で歩いていた。いわゆる、ダンジョンデートだ。
今いるエリアはモンスター除けのアイテムを使えば戦闘もなく散策が可能なので、のんびりとダンジョン内を歩いていた。
「――おっ。宝箱だ」
少し広めの空間に出ると、隅の方に宝箱が見えた。シュンを見上げるとこちらを見て頷いたので、2人で宝箱に近寄る。
「んーと……よし、ミミックじゃなさそうだな」
俺は探知スキルを使い、念入りに宝箱を調べた。昔、別のRPGで何度も不用心に開けてミミック系のモンスターに全滅させられたからな。幸い今回はミミックではなさそうだ。
「なにが入ってるかな……っと」
俺は宝箱の前にしゃがみこみ、わくわくしながら開ける。
しかし――中身は空っぽだった。
「なにかあった?」
「なーんも。もう開けられてたっぽいな」
このダンジョンの宝箱は全プレイヤー共通だ。その代わり頻繁に中身が更新される。どうやらまだ更新のタイミングではなかったようだ。
シュンも隣で箱を覗き込むが、やっぱりどう見ても空っぽ。ちょっとがっかりだけど、よくあることだからと気持ちを切り替える。
「残念だったねえ、ナギ」
ぽんぽんと頭を撫でて慰めてくれるシュン。何気ない仕草にきゅんとしながら、俺は立ち上がる。
「まあ、共通のはしゃーないよなあ。よし、ほかになんかないかな……」
俺は宝箱に背を向け、あたりを見回す。天井からかすかに光が差し込んでいて、道の端には植物やキノコなどが生えていた。匂いなんかも感じられて、フルダイブ型はこういうところがいいんだよなと改めて実感する。
(あ。そういやシュン、なんかキノコ系の素材欲しいって言ってたっけ)
「なあ……」
「……あれ。なんだろう、これ。……え?」
俺が声をかける前に、背後からシュンの声が聞こえた。なにか見つけたのだろうかと思いながら、俺は振り向く。
「シュン、なんか見つけ……、え……?」
振り返った瞬間、俺は疑問符を頭に浮かべながら声を漏らした。思わずあたりをキョロキョロと見回すが、俺の目の前にあるのは宝箱だけ。
――先ほどまでいたはずのシュンがいないのだ。
「シュン……? え、どこだ……?」
声をかけながら宝箱に近寄るが声は返ってこない。そこにあるのは静寂と宝箱だけ。
しかもなんだか、先ほどより宝箱が大きくなっているような気がする。先ほど見たときは、今みたいに成人男性がすっぽりと入るような大きさじゃなかった、はず。
「ログアウトしたのか……? いや、いるな……?」
システムウィンドウを開きパーティー情報を確認するが、シュンはちゃんとメンバーに表示されている。ログアウトしたなら消えているはずだから、まだゲーム内にいるようだ。
「おーい、シュンー? どこ行ったんだー?」
呼びかけながら、シュンの状態を確認しようとステータス画面を開く。パーティーを組んでいたら位置情報が共有されるのだが、同じダンジョン内にいることになっている。
「……まさかなあ?」
俺はふと、目の前の宝箱を見つめ近寄った。
(まさか宝箱に隠れて、俺を驚かそうとしてるのか……? いやさすがにそんなことしないか……?)
急に悪戯心でも芽生えたのだろうか。そう思いながら、俺は宝箱を開ける。
「なーんだ、いないじゃん……って、は……?」
宝箱の中にシュンはいなかった。だけどおかしい。さっき開けたときは空っぽ――つまり底が見えていたのに、今は見えない。
というか……箱の中で、なにかが蠢いている。俺の頭には、閉じないとヤバい、と警鐘が鳴り響いた。急いで宝箱を閉めようと蓋に手を伸ばす。
「……え? うわ……っ!?」
箱の中からなにかが伸びてきて、俺の腕を掴んだ。強い力で引っ張られ――俺は宝箱に飲み込まれてしまった。
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