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居場所のはじまり3
どこか違うところから来た人間が救世主? そんなことあるんだろうか。でも、レオニスさんが嘘をつく必要がないから、きっとそう言い伝えられているのだろう。でも、俺がレオニスさんの役に立てるようなことがあるとは思えないんだけど。もしかして、俺が知っていることがなにか役に立つとかあるのかもしれない。
「でもひとつ不思議があるんです。俺は日本語っていう自国の言葉を話しているつもりだし、他の言語なんて全くわからないのに、レオニスさんが話すことはわかるんです。それがなんでかなって」
「ああ、それか。書物によれば、魔素によって言語が変換されることがあるらしい。私と意思疎通が出来ているのを見ると本当のようだな」
魔素! なんだかほんとに魔法使いがいそうだ。それなら本も読めるかもしれないと思い、ズラッと並んでいる本のタイトルを読もうとしたが、アルファベットがなにか変形したかのような文字で一切読めなかった。
「でも、文字はダメみたいです」
「読めないか?」
「はい。本のタイトル、全然わかりません。本が読めたら良かったのに……」
「それはどうしてだ?」
「元の世界に戻る方法を書いた本があるかもしれないなと思って」
「なるほど。それなら字を覚えてみるか? 覚える気があれば、家庭教師をつける」
「え? でも、わざわざ……。いいんですか?」
「構わない。それでは近いうちに来て貰うように手配する。ああ、あと屋敷の中は自由に歩いていい。ただ、和食とやらは食べてみたいので、作ってくれないか。あとでニコラスに厨房の場所を案内させる」
「庶民の食べるものだけどいいですか? 俺のいたところは貴族っていなかったので」
「構わん。どんな味か興味がある。しかし、貴族がいなかったのなら、どうやって国は統治されていたんだ? 国王もいないのか?」
そうか。ここは国王様がいて、貴族が統治しているのか。そうしたら政治は貴族がするのだろうか。日本の華族制度みたいなものだろうか。
「政治は国民に選ばれた政治家が政治を行います。あと、日本は国王ではなく、天皇と呼ばれるエンペラーがいます」
そういうとレオニスさんは、目を丸くした。
「エンペラーがいるのか! この近隣諸国にエンペラーのいる国はない。素晴らしい国なのだな」
そうか。エンペラーって皇帝だもんな。|国王《キング》より上の存在だ。でも、貴族はいない。国の成り立ちって色々なんだな、となんだか社会科の勉強をしている気になって少し楽しくなった。
「タクヤのいた国は興味深いな。国民が国民を選ぶんだろう? そうしたら政治はどうなるのだろうか」
「ここは貴族が政治をするのですか?」
「貴族が各領地を治めている。国会が開かれる時期は王都に滞在するが、閉会すれば領地へと戻る。今は閉会中だが、もう少しで国会が開会になる。そして閉会すれば領地へ戻る。タクヤのいた遺跡は我が領地の近くだ。あのときは領地からここへ来る途中だった」
国会があるときは王都に滞在して、閉会すると領地へ戻るって、屋敷がふたつあるのか? 貴族すごいな。いや、でも政治をするのなんて大変だ。
あの遺跡は領地の近くだったんだ。だからあそこにグリフォンと一緒にいたんだな。ってか、馬車ってないの? 王様や貴族は馬車に乗ってるイメージがあるんだけど。
とそんな話しをしていると、ドアがノックされた。ニコラスさんだった。
「お話しの最中申し訳ございません。旦那様、領地より使いが参りました」
「そうか。今行く。タクヤ、また時間のあるときに色々教えてくれ。ああ、ニコラス。マルティンを呼んでタクヤの服をあつらえさせてくれ。それから、タクヤに厨房の場所を教えてやってくれ。タクヤ、夕食に和食とやらを作ってみてくれ。食べてみたい」
「かしこまりました」
「では、タクヤ。また後ほど」
貴族って遊んでるんだと思ってたけど、忙しそうだな。日本で言えば政治家だもんな。レオニスさんの背中を見ながらそんなことを思った。
「それではタクヤ様、厨房へご案内いたします」
「あ、お願いします。そうだ! あとでいいので汚れてもいいタオルかなにかを借りてもいいですか?」
「それは構いませんが。お部屋に汚いところがございましたか?」
「あ、違うんです。猫の足を拭きたくて」
「かしこまりました。それではのちほどご用意いたします」
そう言って俺は厨房に案内して貰った。
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