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玄愛2《雅鷹side》1

哀沢くんに振り向いて欲しかった ただそれだけなのに―… 「えー、またダメになったの!?」 遊ぶ予定を入れていたのに、その日に聞きたいセミナーがあるからと言った哀沢くんの言葉に驚いて、俺は大学のカフェテリアで思わず叫んでしまった。 「興味あるセミナーだし。次にいつ聞けるか分かんねぇし」 「だって、この前もダメになったじゃん!」 この前も教授に誘われてどこか行ってたし、しばらく哀沢くんとゆっくり過ごせてない。 一緒にいたいと思うのって普通じゃないの!? 俺を愛してるなら、セミナーより俺を取るんじゃないの!? 考えたらイライラしてきた。 「哀沢くんって、何が一番なんだか分かんないよ」 「何って?」 「俺はさ、予定あっても哀沢くんを優先にするもん。でも哀沢くんは違うんだね」 「俺は時と場合による」 何だよ時と場合によるって! 時も場合もなくて俺でしょ!お・れ! 俺一択!!それ以外あり得ない! もう知らない! 「山田?」 俺は怒って無言で席を立って、食べかけのオムライスを片付けに向かった。 高2から付き合い始めてもう4年が経ち、俺たちは大学3年になる。 俺は哀沢くんを好きになって7年経ったけど、それでも俺の哀沢くんへの愛は冷めることは無い。 むしろ深く深く深海よりも深く愛してるっていうのに。 なのに! 時と場合に俺が負ける!? 哀沢くんは俺が優先じゃない? 愛してたら俺が優先なのは当たり前なのにっ! 許せないぃぃぃぃぃーっ! 「山田くん、怒ってるの?」 怒りながら食器を片付けている途中で、ふと後ろから声をかけられた。 怒ってるよ!と思いながら振り返った俺の顔はきっと鬼に見えただろう。 「あ…|篠原《しのはら》くん」 同じ学部の篠原くんだった。 「睨むぐらい怒ってたんだ」 やっぱり睨んでたか。 「ごめんねっ!篠原くん何も悪くないのにね」 「どうしたの?俺でよければ話聞くよ」 なんて優しいんだ。 哀沢くんとは大違いだな。 「山田、もうすぐ4限だぞ」 篠原くんの後ろから、哀沢くんが俺を呼び掛けた。 俺は怒ってるんだから。 大事な予定をダメにされて怒ってるんだから。 時と場合に負けたことに怒ってるんだから。 そう思ってたのに、哀沢くんに頭をポンってされて「遅れるぞ」って低音ボイスでささやかれたら… やっぱり、かっこいいって思って許してしまう自分がいる。 完全に哀沢くんに攻略されてるのが自分でも腹が立つ… 「山田くん、今度話聞かせてね」 「ありがとう」 そういって篠原くんと別れて哀沢くんと一緒に4限の講義へと向かった。 でも俺は怒ってるんだよ。 哀沢くんの隣を歩いていても、怒ってる。 歩いてるというか、歩いてあげてるんだよ。 この怒った俺が。 哀沢くんの隣を。 歩いてあげてるの。 Do you understand? 講義中も俺はイライラしているオーラを出した。 怒ってても隣に座ってあげてるけどね。 哀沢くんの隣を。 座ってあげてるの。 4限が終わったあと、不機嫌な俺に哀沢くんが話しかける。 「山田」 「なに!」 今度は何を言って俺を怒らせるつもり… 「今日うちくるか?」 「えっ」 うそ、急なお誘い。 やばい、やばい、やばい! 嬉しいっ。 「うん!」 哀沢くんは、俺の扱い方を知ってるんだなぁ。 今、哀沢くんは一人暮らし中。 俺から行ってもいい?って聞くことが多くて、哀沢くんからのお誘いはあんまりないから嬉しすぎる。 「なら…先に俺んちにいるか?合鍵あるだろ?」 4限が終わったら哀沢くんだけ5限がある。 「ううん。カフェテリアで待ってる」 「分かった」 そういって哀沢くんは5限の講義を聴くために移動した。 あと90分我慢すれば、哀沢くんちにお泊まりできるなんて。 考えただけでにやけちゃう。 さっきまで鬼だった俺の顔は、きっとだれが見ても仏になっているであろう。 俺はカフェテリアでコーヒーを頼んで、課題をやって待っていた。 「山田くん」 聞き覚えのある声に呼ばれて振りかえると、篠原くんがいた。 「帰らないの?」 「うん。哀沢くん5限出てるから、待ってるんだ」 「そっか」 そういって篠原くんは俺の隣に座った。 「それじゃ、俺も時間あるし、さっきの相談聞こうか?」 あぁ、怒ってた理由か。 「大丈夫。解決したから」 「俺でよければ話し聞くから」 「ありがとう」 「そういえば、さっき心理学の講義に出席してたよね?俺、聞き逃したとこあるんだけど教えてもらっていいかな?」 「いいよー」 哀沢くんもまだ終わらないし、一人でいるより篠原くんと話してたほうが時間過ぎるの早そうだもんね。 篠原くんとは、入学式のときにたまたま隣に並んでたのがキッカケで話すようになった。 俺より背が高いし、サッカーとボクシングのサークルに入ってて、気取らないし、すごく優しい。 「へー、山田くんって末っ子なんだー」 「そうそう、だから甘えん坊なの。逆に、篠原くん一人っ子なんだね。しっかりしてるから意外」 気付くと、心理学の話じゃなくてお互いのプライベートな話しに変わっていた。 時間が過ぎるのも忘れて、お互い色々なことを話した。 「山田くんと哀沢くんて、いつ知り合ったの?」 「中学の時だよ。同じクラスになったから」 当時の俺はワガママで、面倒なことはなんでも人に押し付けて楽してたんだよね。 でも哀沢くんだけが言うこと聞かなくて、色々いじわるしたけど、何の効果もなかったなぁ。 今思うと俺って最低。 哀沢くんがいなかったら、まだひねくれてそう。 哀沢くんの笑顔が見たくて、必死に毎日頑張ったなぁ。 やりたくない放課後の掃除とか率先して。 そんな俺を見て「無理するなよ」って優しく声かけてくれたなぁ。 あの時はそれだけで嬉しかった。 「それで好きになったんだ?」 「うん。俺はそれからずーっと好きで、中学の卒業式の時に告白してダメで、高2の冬に告白してダメで、3回目で実ったんだ」 「へぇ」 「でも最近は、約束したのに別の予定いれたりするし、俺のこと好きかどうか分かんないんだよね」 時と場合によるとか言ってたし。 いやいや、時も場合もないんだよ。 俺優先でしょ。 「そしたらさ、哀沢くんが山田くんのこと好きか確かめる方法があるよ」 「えっ?どんな?」 「俺と仲良くしてみようよ。そしたらきっと分かると思う」 篠原くんと? 仲良く? たったそれだけ? 「うーん。意味ないと思うけどなぁ。哀沢くん、嫉妬しないし」 「まぁ、物は試しということで。とりあえず、連絡先教えてよ」 「いいよー」

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