22 / 22

終話 それから⑤

「じゃあ、これが部屋の鍵。なにかあったらオレか、ここにいるロメルに言ってねー」 「はい! よろしくお願いします!」  アパートメントのエントランスに元気な声が響く。新しい住人が快活そうな笑顔で204号室の鍵を受け取り階段を上っていった。新規住人の姿が見えなくなると、ジュードさんと――元204号室の住人であるおれは管理人室に帰る。  先日、おれは2階から1階に引っ越した。引っ越し先は、ジュードさんの自宅。物置にしていた空き部屋をおれの部屋としてもらったけど、寝るのはもっぱら彼の寝室。セックスをしない日も同じベッドで抱き合って寝るのが習慣になっているから、ほとんどの夜を彼の寝室で過ごしている。  恋人になってからしばらくの間は、204号室をそのまま自室として使っていた。といっても、ほぼ毎日ジュードさんの寝室で寝ていたから荷物を取りに帰ったり、着替えに行くくらいでしか使わなくなっていたけど。  それでもおれの部屋として使っていいと言ってくれていたが、ある日自分の部屋に引っ越してほしいと彼に言われたのだ。あのときのジュードさんの瞳に嫉妬の色が見えていたから、気づかないうちになにかしらあったのだろう。荷物はあまり多くなかったから、引っ越し自体はすぐに完了した。  空いた204号室は、募集をかけてすぐに入居したいと連絡があった。それが先ほどの住人だ。家賃が安いから希望者が来るのが早いなと驚いたけど、それよりも驚いたことがある。それは、ここに来てすぐにジュードさんがいつ引っ越せるか聞いたら、すぐに引っ越すと答えたことだ。  安すぎる家賃を不審に思わないんだろうかと思っていたけど、どうやら催眠魔法が影響しているらしい。性的なことだけじゃなく、建物に入った時点でこのアパートメントに関するすべてのことに疑問を持たなくなるようになっているんだとか。希望者から美味しそうなにおいがすれば入居が決定するんだとジュードさんが説明してくれた。  その説明を聞いてようやく、ここに最初に話を聞きに来たときに、おれの質問に対してジュードさんが不思議そうにしていた理由がわかったのだった。 「新しい人のザーメン、どんな味がするか楽しみですね、ジュードさん」  今日の仕事も終わり、夕食を食べたあとリビングのソファに並んで座った。ジュードさんのザーメンを入れた紅茶を飲みながら口を開くと、ジュードさんはむっと口を尖らせる。 「ロメル、やっぱりあの人のザーメンも食べてみたい?」 「少しだけ。味見くらいはしてみたいなって」  恋人になってから知ったのだが、ジュードさんはかなり嫉妬深い。両思いだとわかる前にほかの住人のザーメンをおれが食べるのを嫌そうにしていたのは、自分のザーメン以外を口にしてほしくなかったからだそうだ。ジュードさんの分が減るからだと思っていたと話せば、減るのが嫌ならはじめから許可してないと言われて、確かに、と笑ったのは結構前のことだ。 「ちょっとだけだからね。ザーメンはいいけど、おちんぽはダメだよー? どんなに美味しかったとしてもね」 「もちろん。……大丈夫。ジュードさんのザーメン以上に美味しく思えるザーメンはないです」  ジュードさんと一緒に味わってみたいから、新しい住人のザーメンも一度は口にするだろう。でも、おれが純粋に美味しく思えるのはジュードさんのものだけ。安心させるように彼の頬に口づけた。まだ少しだけむっとしながらも、ジュードさんがおれの唇をちゅ、ちゅと吸う。 「ロメルは嫌なことってないの?」  キスの合間に尋ねられ、もちろんある、と頷いた。 「ジュードさんがおれ以外とキスするのは嫌だし、おれ以外のおまんこを弄ったりチンコを挿れたりするのは絶対嫌だ。あと、ジュードさんのチンコを扱いてしゃぶっていいのはおれだけだし、ジュードさんのザーメンを食べていいのも……んっ♡」  言い終わる前にジュードさんの舌が口内に入ってくる。じゅるじゅると舌を吸われ、気持ちよさで背中がゾクゾクした。手に持っていたカップから少しだけ紅茶が零れたのが視界の端に映る。 「あー、もったいない……♡」  唇が離れると、おれはカップに残ったザーメン入り紅茶を飲み干す。まだジンジンと甘い痺れが残る口内に彼のザーメンの味が広がって、おまんこがきゅんと疼いた。  カップをローテーブルに置くと同時に、ジュードさんにぎゅっと抱きしめられる。 「……ロメル。寝室……行こっか」 「はい……♡」  寝室に向かいベッドに入り、早くひとつになるべく服を脱がせ合う。今夜もたくさんおまんこでザーメンを飲んで、明日の朝はジュードさんのザーメンをたっぷりかけた朝食を食べるのだ。最近ははちみつとザーメンをたっぷりかけたパンケーキにハマっているから、明日もそれを作ってもらおう。そんなことを考えながら、おれは快楽に身を沈めた。  今日も、明日も、これからも。このアパートメントでおれとジュードさんは、エロ小説よりもすごくていやらしくて、とても楽しい日々を過ごしていくのだ――。 (了)

ともだちにシェアしよう!