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第1話 対峙

ーー都内のスタジオーー 窓の外には高層ビルが立ち並ぶ。朝の光が差し込み、壁に反射するライトが銀色に煌めいている。スタッフたちは忙しなく機材を運び、カメラマンや照明係が微調整を繰り返す。空気はすでに、少しだけ緊張している。 ――俺、Song(ソーン)はタイからはるばるやってきていた。ここ東京に。 タイと日本。大物ミュージシャン同士がコラボするという楽曲の、MV撮影に今回参加することになった。 今日はその初日である。 「……また、日本か」 軽く息を吐く。慣れた土地とはいえ、空気の違いを肌で感じる。スタッフの動き、音楽のリズム、ライトの反射――どれもが俺の神経を少し刺激する。 特に隣の男、中谷里紫(なかたに さとし)。 俺はこの男が心底苦手だ。 共演するのは今回で二度目、前回の共演では、あの軽い態度と余裕の笑みで俺の神経を逆なでした。 今日もまた、同じ空間で動きを合わせなければならないと考えると肩に力が入る。 「はい、じゃあ撮影開始しまーす」 ーー数十分後 撮影は順調に進んでいた。 「はい、OK! このシーンは次で最後ね~」 映像ディレクターのDrift(ドリフト)が指示を出す タイ、いや世界から声がかかる新進気鋭のクリエイターだ。何回か一緒になったことがあるが信頼のおける人だ。 「あの、今のところもう一回撮りません?」 ……始まった。 中谷里紫、この男は前回もそうだった新人だというのにいちいち口を出してくる。 「ディレクターがOKと言っているんだ。問題ないだろう。」 努めて落ち着いて俺は言った。 「でも、音楽のリズムとちょっとズレてた」 お前が、と続ける。 ピキッ 何かが鳴った音がしたが、いまはどうでもいい。 悪かったな。こっちはこのJ-POP独特のリズムに慣れてないんだよ! 声を荒げそうになるのを抑えて俺は答えた 「……リズムの調整は後からかけられるだろ」 「でも現代(いま)の音楽界、リズムが命だろ」 きっぱりと言われる。日本の音楽界のことは知らんが、俺はモデルであってミュージシャンでもダンサーでもないんだよ! 「限界がある」 「じゃあ、俺とダンス練習…する?」 「………」 なぜ、そうなる 「あー…えとー、とりあえず一旦休憩!」 ディレクターのDriftがこのままだとますます険悪なムードになるであろうことを察し、声をかける が、この後の撮影もあまり上手くはいかず この日の撮影は終わった。 「大丈夫か?」 Driftが声をかけてくれた。 「まぁ、なんとか」 「あんまり気にすんなよー"お前ら"はどっちも違う方向にプロ意識が強いだけなんだよ」 同じ方向を向けば、いい作品になると思うぞーと、独り言のように告げてDriftは去っていった。 ーー楽屋前ーー 「お、居た居た」 なぜか俺の楽屋前に中谷が立っていた 「何の用だ?」 「いやー、俺これからダンス教室に行くんだけど、一緒にどうかな~と思って」 「……は?」 こいつ、わざわざダンス教室に通ってるのか?この撮影のために? 「なんでわざわざ」 「ちょっとでもやってれば表現力が上がると思って」 そう言って微笑む中谷の顔は穏やかな表情の中に真剣さが滲んでいた

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