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第2話 威嚇
ーー都内のダンススタジオーー
「……はぁはぁはぁ」
なんでこんなに動くんだ
俺は不覚にも中谷に触発され、ダンスレッスンを受けていた
「もう、バテたのか?」
「…うるさい、」
日頃の運動不足がこんなところで痛手になるとは、、
「ほら」
「…ども」
中谷が水を差し出すと、
隣に腰を下ろした
「お前、リズム感 壊滅的なんだな」
お前ーーー!
人が気にしてることを包むことなく直球で言ってくる
「いつもなに聴いてんの、音楽」
まるで友達かのごとく自然と距離を縮めてくる
そうだ、俺はこの男のこういうところが苦手だったのだ
前回共演したときも俺が何か発言する度ににやにやと意味ありげに笑っていた。
「なに見てんだよ」
「いや?別に」
絶対に別にじゃない言い方。
中谷はタオルで首元を拭きながら、横目で俺を見る。
「顔に出やすいよな、お前」
「……は?」
「考えてること。全部」
余計なお世話だ。
俺は視線を床に落とす。
木目のフロアには、まだ熱が残っている。
足裏からじわじわと伝わってくる。
「別に、考えてねぇし」
「はいはい」
軽く流される。
その距離感が、妙に腹立たしい。
音楽が切り替わる。
次のレッスンの準備だ。
「ほら、立て」
中谷が立ち上がり、手を差し出す。
「自分で立てる」
その手を無視して立ち上がると、
中谷は肩をすくめて笑った。
「警戒心強いな。猫か?」
「……」
「黒猫っぽい」
余計な分類まで付けるな。
振付が始まる。
テンポは早い。
さっきよりも、さらに。
必死に動く俺の横で、
中谷は余裕そうに身体を流している。
視界の端で、何度か目が合う。
そのたびに、わざとらしく視線を逸らされる。
——見てたくせに。
ステップを踏み損ね、
一瞬、体勢が崩れる。
その瞬間、
背中に手が添えられた。
「おっと」
低い声。
近い。
倒れはしなかった。
でも、触れた手の温度が、やけに残る。
「触るな」
反射的に言う。
「危なかったから」
「……それでもだ」
中谷は一瞬だけ目を細めて、
すぐにいつもの調子に戻った。
「はいはい。威嚇 、威嚇 」
その言い方
腹が立つ。
「でもさ」
中谷が、わざと近づいてくる。
「噛む気がないなら、牙しまっとけよ」
やつの目が鋭く光った。
音楽が鳴り続ける中、
俺は無言で一歩引く。
威嚇なんかじゃない。
これは——
自分を守る距離だ。
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