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最終話 ご褒美はハジメテの……

 横たえられたベッドはふっかふかで、シーツも肌触りがいい。  つい三日前に千里くんと選んだそれを一番最初に使うのが、寝るためじゃなくてエッチするためだなんてね。  期待してちょっと想像はしてたけど、本当にそうなるなんて思ってもみなかった。   「ふ、ぅ……あ……」    千里くんに覆い被さられ、今度は俺がクタクタにならないように唇を啄むキスを繰り返す。  それだけで幸せなんだけど、軽いキスだけじゃ物足りない。    それは千里くんも同じだったみたいで、俺たちは互いにシャツの裾から手を入れ、緊張と興奮でしっとりと汗が浮かんだ肌を確かめていく。  線が刻まれたお腹も、むっちりと筋肉が付いた胸も、肩甲骨が浮く背中も、全部。    千里くんの体はどこを触っても気持ちよくて、ずっと触っていたい。  手を滑らせるだけの愛撫に技術はないけど、千里くんはキスの合間に鼻に抜けるような吐息を溢している。  これって、気持ちいいってことだよね?    俺の不器用な手の動きに対し、千里くんの手は巧みに俺の肌の上を泳いでいく。  指先が触れるだけでピリッと電気が走ったみたいな感覚があって、ツゥ……っと撫でられると腰が重くなる。  乳首の周りを優しく揉まれているだけなのに、ムズムズして早く触ってほしいって思ってちゃう。   「背中、そのまま浮かせておいて」 「ふ、え?」    キスの合間に囁かれた言葉に首を傾げ、自分の体を見た。  うっすらと赤くなった体。  胸を突き出し、ゆらゆらと左右にぎこちなく揺れている。  それはまるで、乳首を触ってほしいっておねだりしてるみたい。   「はッ、恥ずかしい……!」 「恥ずかしがってるのも可愛い」 「千里くんの言葉責め⁉︎」 「いや、してないから」    クスクスと笑う千里くんは器用に俺のシャツを脱がし、ついでに自分のシャツも脱いでベッドの端に追いやった。  あ、俺が脱がせたかったのに。    物欲しそうな顔をしていたんだろうね。  千里くんはチュッと軽くキスをすると、俺の首筋に唇を寄せた。  肌に浮かんだ汗を味わうようにクチュリと啄まれ、時々チリッとした痛みが走る。  それが段々と胸元に近づいていって、背中がゾワゾワして、乳首と下半身がジンッと疼く。   「うぁ……千里、くん……」 「気持ちいい?」 「ん……」    気持ちいいんだけど、それを口に出すのはなんだか恥ずかしい。  俺はコクコクと頷いて気持ちいいことを千里くんに伝えた。    触られるだけで気持ちいい。  千里くんにも気持ちよくなってもらいたい。  だから、俺はさっき千里くんがピクリと反応した背中に手を這わせた。  触れるか触れないかの絶妙な感覚に気をつけて、腰から上へとなぞっていく。  うなじに辿り着いたら、今度は耳やその裏をくすぐった。   「っ……」    千里くんから息を詰めるような音が聞こえる。  自然と交わった視線。  千里くんの顔ははちみつみたいにとろりと溶けていて、だけど飢えたライオンみたいに目が光っている。   「気持ちいいからもっと触って? 俺も触るから」    そう言った千里くんの口は、焦らされてぷっくりと自己主張している俺の乳首を食べてしまった。   「ひ、ぁ……!」    温かくてぬめった舌が勃った乳首を押し潰し、時々歯が立てられて嬲られていく。  ジュッと音を立てて吸われると、腰が勝手にビクッと跳ねる。  反対の乳首も手でコリコリされると、俺は千里くんを触って気持ちよくさせることができない。   「千里く、ん……俺も、触りたい」 「うん、触って?」    そう言ってるのに、千里くんは俺の乳首を舐めたり、脇腹から腰をツゥ……ッと撫でるのを止めてくれない。  きっとこれは俺のミス。  俺が「乳首を触るのやめて」って言えばよかったんだんだよね。  いやでも、そんなこと言って千里くんが傷付いたら嫌だし、そもそも乳首って口に出すのも恥ずかしい。    結局、俺は恥ずかしいのと気持ちいいのとで、千里くんの首筋を手で撫でるくらいしかできなかった。  千里くんをどうにかして気持ちよくしたいと思ってたんだけど、上手く手が動かせなくてじれったい。    千里くんに翻弄されていると、気付いたときにはスラックスのチャックが下げられていた。  少しだけ楽になった下半身の感覚に、俺がどれだけ興奮していたのか嫌でもわかる。   「腰、上げて」    愛撫が止まって自分の思い通りに動くようになった体。  俺は千里くんの言葉に従って腰を上げる。  千里くんが俺の足からスラックスと黒のボクサーパンツをまとめて引き抜くと、現れたのは俺のもの。  多分、大きさとかは平均だと思う。  それが、千里くんに触られて痛いくらいに勃っていた。    千里くんに見られて恥ずかしいと顔を赤くしながら、俺はゆっくりと上体を起こす。  そして、膝立ちになっている千里くんのスラックスに手をかけた。   「俺が脱がせるね」 「うん。頼む」    千里くんのシャツを脱がし損ねた俺は、意気揚々とそのスラックスを引き下ろす。  すると、びっくりするくらい大きい千里くんのがボクサーパンツから出てきた。  手の中に収まらない長さと太さ。  色は濃ゆい赤。  いくつも血管が浮き出ていて、これぞ理想! って感じ。   「かッ……かっこいい……」 「ありがとう。でも、そんなに見られると恥ずかしい」    千里くんも、俺と一緒で恥ずかしい?    気になってちらりと見上げると、顔を真っ赤にした千里くんがいた。  右手で目の辺りを隠し、いっぱいキスをして赤くなった唇は横にキュッと引き結ばれている。  でも、指の隙間から見えている目は俺の顔をしっかりと捉えているし、喉に突き出た喉仏はごくりと上下した。    ぞくりと肌が粟立つ。  千里くんが何を期待しているのかわかった。  その期待に応えたい。  胸の奥で膨れ上がる衝動に身を任せて、俺は千里くんの先端にキスをした。   「ッ……颯斗!」 「じっとしててね」    大きくて熱い千里くんのを口に迎え入れると、千里くんのがピクリと跳ねた。  それが嬉しくて奥まで入れてみたけど、全部は入りきらない。    根元は手で撫でて、どうにか口の中に収まった先端から真ん中にかけては舌をぴたりと当てて頭を動かしていく。  ちょっと苦しいけど、千里くんが気持ちよさそうな息を漏らしているから気にならない。   「ん、ふ……んん……」    もっと気持ちよくなってほしいと吸い付いてみると、口の中にじわりと苦味が広がった。  それでも嫌だと思わなかったし、体の奥が疼いて俺のがふるりと震えている。    千里くんの腰に手を添え、もじっと足を擦り合わせたとき、口の中から千里くんが出て行ってしまった。  口を「あ」の形にしたまま千里くんを見上げると、眉がキュッと真ん中に寄っている。  もしかして、歯が当たって痛かった?   「一緒にしよう」    背筋にひやりと汗を垂らしていると、千里くんはそう言って俺をベッドに押し倒して横向きにした。  そして、千里くんも俺の方を向いて横になる。    ただし、上下は逆さま。  目の前には千里くんのがあって、千里くんの目の前には俺のがある。  これってつまりアレだ……!   「エッチぃやつだ!」 「颯斗はさっきからずっとエロいよ」    ふふっと笑った千里くんは、躊躇いもなく俺のを舐めて口に含んだ。  途端、腰から全身に広がる痺れに肌が粟立つ。  顔を引くタイミングで吸われると堪らなくなって、勝手に足が震え出す。    シックスナインなんだから、俺だって千里くんを気持ちよくするよ。  さっきと同じように、俺も千里くんのを咥えて吸って、口から出して舐めたりしていく。    だけど、口での奉仕は千里くんの方が上手。  さらに、同時にお尻の周りを撫でるようにして押されてゆっくりと指を入れられると、千里くんを気持ちよくするどころじゃなくなっていた。    だって、千里くんはいつの間にかローションで濡れた指で俺のお尻の中を優しく撫で擦ったり、小さく揺すってクチュッと水音を立てている。  それに、お腹側にある浅いところを押されると変な感じがする。  これがなんだか知っている。   「あっ、あぁッ……せ、千里くん! そ、そこ……なんか変!」 「前立腺な。ここが颯斗の気持ちよくなるところだよ」 「本当に?」    気持ちよくなるってことは知っているんだけど、漫画で読んだのと違う。  だって、俺の知ってる気持ちいいじゃないんだもん。  でも、そこを押されると声が出ちゃう。  次第に俺のに集まっていた気持ちよさが腰の方まで膨れ上がっていく。  もっと触ってほしくて、千里くんの指を腰が追いかける。   「可愛い。もう、いいかな」 「え、ぁ……」    ゆっくりとお尻から引き抜かれた指。  お尻が物足りなくなって切ない声が出ちゃった。  でも、千里くんがちゃんと満たしてくれる。  お尻の準備ができたら、やっと千里くんと深いところで繋がれるんだからね。    千里くんは息の上がった俺の足の間に体を滑り込ませ、スキンを取り出した。  だけど、よく見ると封を切ろうとする千里くんの手は小さく震えている。   「千里くん?」 「ごめん。興奮してるし緊張してるしで上手く開けられない。待っていてくれるか?」 「一緒にするよ」    余裕があるように見えた千里くんだけど、本当はそんなことなかった。  きっと俺を不安にさせないためなんだよね。    そんな千里くんが愛おしくて、俺は震える千里くんの手に手を重ねて包み込んだ。  一緒に丸いスキンのパッケージをペリッと開け、ローションで濡れている膜を取り出す。   「ありがとう」 「どういたしまして。俺と千里くんのことなんだから、二人でやりたいじゃん」    スキンを千里くんのにくるりと被せていけば、あとは追加のローションで濡らすだけ。  千里くんがローションを出している間に、俺はころりとベッドに背中をつける。  それから、千里くんが挿れやすいようにお尻に手を添えて左右に開いた。  恥ずかしいから、ちょっとだけなんだけど、ね。    千里くんはぼそりと何か呟いたんだけど、聞こうとする前に遮られた。   「挿れるぞ」 「うん」    掠れた声に頷けば、お尻に太くて熱いものが押し当てられる。  それが、水音を立ててゆっくりと俺の中に入ってきた。   「ッ……ぁ、は……」 「痛い、か?」 「ううん。痛くない、よ? ちょっと、苦しいだけ」    千里くんのが大きくて、どうやって力を抜いたらいいかわからなくなるくらい苦しい。  でも、それさえ気持ちいい。  だって、千里くんと繋がっている。  ずっと前からこうしたかった。   「嬉しいから、おっ……奥まで、きて……」 「じゃあ、ゆっくりな?」    俺がこくりと頷くと、千里くんは赤い痕がつくくらいお尻を掴んでいた俺の手を開かせ、俺の肩の横で指を絡めて手を繋いでくれた。  その温かさが優しくて口元が緩む。  俺は重ねられた手をギュッと握り、千里くんの手に唇を寄せた。    宣言通り、千里くんは腰を揺すってゆっくりと俺の中に入ってくる。  千里くんを奥まで迎え入れたときには、二人ともびっしょり汗をかいていた。   「入った?」 「ああ、全部」 「嬉しい」    ほろりと目尻から涙の粒が溢れ落ちる。  それを指で掬って舌で舐めとった千里くんは艶めかしい。  落ちてきた唇に応えて舌を絡め、吐息を分け合う。    そうしているうちに、千里くんが腰を動かし始めた。  最初は優しく奥を捏ねるように腰を回していたのが、ゆっくりとした抽送に変わっていく。  千里くんに指で散々弄られた前立腺を押し潰されると腰からパッと気持ちよさが全身に広がって、息だけでなく声まで出ちゃう。   「ひ、ぁ、あ……せんり、くん……!」 「颯斗……気持ちいい?」 「う、ん……気持ちいい……せんりくん、は?」 「気持ちいい、よ」    ゆっくりと動いているだけなのに気持ちいい。  幸せで胸がいっぱいになって、千里くんと触れ合っているところが溶け合いそうなくらい熱い。  千里くんに俺のを握って上下されると視界が白くなって、パチッと気持ちよさが弾けた。   「やっ……も、いッ、イく……い、あぁぁ……!」 「俺、も……っく、ぅ……」    抱き合って快楽に震え、多幸感にまた涙が溢れてくる。  全身に広がっていた波が引くと、息を整える間もなくキスをした。  まだ一ミリだって離れたくない。  逞しい背中に腕を回し、千里くんの唇を貪る。   「颯斗」 「んぅ……や、まだ、キス……」    キスしていたいのに、千里くんは体を起こしてしまった。  幸せな時間が終わっちゃう。  それが悲しくて、俺は年甲斐もなくぐずった。    でも、千里くんは俺を裏切らない。  千里くんは俺の頬を撫でながら愛欲に濡れた目を向けてきた。   「好きだ。キスも、それ以上も、何回でもしよう」    千里くんはゆっくりと俺の中から出ると、手早くスキンの処理をして、新しいスキンを千里くんのに被せた。  そして、俺の足を肩に担ぐと、ふくらはぎに顔を寄せてキスをする。    千里くんのかっこいい仕草に胸を撃ち抜かれ、ぶわりと一気に体温が上がった。  そうだね。  これからはずっと一緒いるんだ。  今だって、この次だって、こうして何度も唇を重ねて、体の深いところまで繋がれる。   「俺も、大好きだよ。千里くん」    幸せな時間は、これからずっと続いていく。  俺は千里くんを抱き寄せて、甘くてとろけるキスをした。

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